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掘削工事にはリスクもある。

地熱探査の研究をしているものとして、残念なニュースを知りました。

北海道蘭越町で三井石油開発(本社・東京都千代田区)が実施している地熱発電の調査のための掘削現場で、6月29日に大量の蒸気などが噴出した。7月7日現在も蒸気噴出は続いている。当初は「人的被害なし」としていたが、硫化水素中毒で一時入院する人的被害が出ていた。また、6日になって噴出場所付近の水たまりから非常に高濃度のヒ素が検出されたと発表されるなど、同社の情報開示の遅れが目立っている。・・・

2023年7月8日の朝日新聞デジタルからの記事の抜粋

このことを最初に知ったのは、スマホで見たネット記事でした。これに関連する報道は、NHKのニュース番組でも短く放送されていました。私は関係者ではありませんし、ネットの記事に書いてある情報しか知りません。情報が少ない時に憶測で記事を書くことは、あまり褒められたことではありませんが、地熱掘削に関するリスクについて、少しだけ書きたいと思います。

地熱エネルギーを利用するためには、地下に存在する地熱流体(地熱蒸気や地熱水)を取り出す必要があります。そのために、地下深くまで井戸を掘るボーリングと呼ばれる作業が行われます。地下に存在する地熱流体には硫化水素が含まれることもあり、これは想定されるリスクです。また、地下水中には高濃度のヒ素が含まれることもあり、これも地熱利用のリスクの一つです。

ボーリングに先立って、地質調査や物理探査が実施され、地熱流体が取り出せそうな有望地点に井戸を掘ります。ただし、いくら詳細な調査をしても”硫化水素やヒ素”などの有害物質の存在を正確に把握することは、残念ながら出来ません。しかし、硫化水素やヒ素の存在は”想定外”ではありませんので、リスクの管理が必要です。通常の地熱掘削では、蒸気が噴出しないように細心の注意を払って掘り進めますので、ほとんどの場合、蒸気が噴出することはありません。ひょっとすると今回の蒸気噴出の原因は、機械の故障や作業ミスなのかもしれません。

目に見えない地下を掘り進むボーリングには、少なからずリスクがあります。ただし、そのリスクは正しく対処すれば回避できます。今回の蒸気噴出は残念な出来事でしたが、これだけで”地熱開発は危険だ”と考えて欲しくないのです。これ以上の健康被害を起こさないためには、今後の対応が重要です。また、再発防止のためには原因究明も必要だと考えます。人的被害が拡がらないことを祈っています。

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