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フーリエ変換とラプラス変換

 連続的に時間変化するデータを時系列データと呼びます。一般的にほとんどのデータはノイズなどを含み時間的に変化しますから、多くのデータは時系列データとみなすことができます。この時系列データから有意な成分を取り出すデータ処理に、フーリエ変換が使われます。フーリエ変換は、物理探査だけでなく、多くの物理現象の解析に使われるポピュラーな手法です。

 フーリエ変換は、フーリエ(Fourier;タイトル図)が考案したデータ解析法で、複雑な周期関数をより簡単に記述することができるため、音や光といった波動の研究に広く用いられ、調和解析という数学の一分野を形成しています。フーリエは、固体内での熱伝導に関する研究から熱伝導方程式(いわゆるフーリエ方程式)を導き、これを解くためにフーリエ変換を活用しました。フーリエ変換を簡単に説明すると、複雑な時系列データを正弦波や余弦波の重ね合わせで近似します。

 フーリエは、1798年、かのナポレオンのエジプト使節団の一員に選ばれ、ナポレオンに随行しました。フーリエはこのエジプト滞在で、ロゼッタ・ストーンを発見してフランスへ持ち帰り、しばらく自室で保管していました。この時、のちにヒエログリフを解読することになるシャンポリオンに、ロゼッタ・ストーンを見せています。

 フーリエ変換の利点は、複雑な現象を単純な波動の和として表現できることですが、もう一つ大きな利点があります。それは、時系列データの変化量(微分値)を簡単に計算できることです。時系列データの時間微分は、時間領域でも計算できますが、微分を差分で代用しないといけないので、精度が出ません。こんな時に、フーリエ変換が使われます。フーリエ変換した後の、周波数領域では、時系列の微分がiω(i:虚数単位;ω:角周波数)を掛けるだけの簡単な計算で実現できるので、高精度で微分計算ができます。つまり、微分の計算は、1)フーリエ変換、2)iωの乗算、3)フーリエ逆変換の3ステップで実行できます。この数値微分の方法で計算精度が低下しないのは、桁落などの可能性がある除算を使わないからです。

 フーリエ変換は、波動現象を扱う弾性波探査や地中レーダ探査でよく使われますが、時系列データではない重力探査や磁気探査などの空間データにも、フーリエ変換が使われます。この場合は、2次元空間でのフーリエ変換が使われます。フーリエ変換を使うと、データを短周期(浅部の異常)と長周期(深部の異常)に分離することができます。

 フーリエ変換と似た変換に、ラプラス変換をいうものがあります。フーリエ変換では変換のパラメータに使う周波数ωは実数ですが、ラプラス変換ではパラメータであるsは複素数になります。時間領域からのフーリエ変換やラプラス変換は、下図のように複雑ですが、フーリエ変換からラプラス変換への計算は簡単で、iωを複素周波数sで置き換えるだけです。これまでの説明のように、時間領域、周波数領域、ラプラス領域の間には密接な三角関係があります。

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  数学的にはもっと厳密な説明が必要ですが、フーリエ変換やラプラス変換が理解できれば、様々な角度からデータを解釈することができます。コンピュータ上で離散フーリエ変換を高速行なう高速フーリエ変換(FFT) は、理系研究者の必須知識です。

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