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私のバイブル#5 『電気探鉱学 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ』

 私の主たる専門分野は電気探査および電磁探査です。特に学部や大学院の頃は、電気探査の研究をしていました。その時にお世話になったのが、清野 武先生の『電気探鉱学』です。清野先生は、昭和22年〜昭和30年まで京都大学の物理探鉱学講座で教授をされていた先生です。清野先生の出身は、京都大学の電気工学教室で、物理探査屋さんの中では異色の経歴です。

 清野先生が物理探鉱学講座にいたのは8年ちょっとで、古巣の電気工学教室に戻ってからは、物理探査の研究はあまりしていません。しかし、物理探鉱学講座に在籍していた間に、電気探査(主に比抵抗法)の理論的な研究を精力的に推進し、各種の地下構造や地形についての境界値問題を解析的に解きました。この電気探鉱学の本(3分冊)には、その清野先生の情熱が注がれています。

 この本は、活字版ではなく、手書きのガリ版原稿を印刷した特殊な本になっています。古い本なので、原本は紙の質が悪く、黄色く変色しています。私が使っているのは、原本をコピーした本です。この本が通常の出版物にならなかった経緯は、この本のまえがきに書かれています。時代背景もあるのでしょうが、出版社の倒産や出版不況で二度も出版が中断されたため、通常の本とは異なる形で世に出た貴重な本です。

 手書き原稿を基にした本ですが、分かりやすい字で、図面も手書きとは思えないほど、キレイに書かれています。この本が凄いのは、比抵抗法の基礎理論が偏微分方程式の導出段階から書かれていることです。また、解析的に解ける問題は、ほとんど網羅されています。電気探査の教科書なのですが、応用数学の教科書といっていい位、探査理論の数学的な導出が丁寧に描かれています。

 いまだに、電気探査の理論を考える場合には、まずこの電気探鉱学を手に取ってパラパラとめくります。そうすると、お目当ての箇所が見つかって、解析的な解法の糸口がつかめます。相当古い本ですが、内容はいまだに色褪せない、私の貴重なバイブルです。

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