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コラム#8B 炭素14とアイスマン

 考古学の分野では,炭素14を用いた年代測定法がよく利用されています.試料となる生物が生きている間は,試料中に含まれる炭素の同位体比は一定の割合に保たれます.しかし,その試料が死んでしまうと炭素14が壊変して減っていきます.そのため,炭素14と炭素12の比率を測定することで,資料の年代を決定することができます.この炭素同位体を使う方法は,アメリカのリビー(Libby)によって考案されました.

 通称エッツィと呼ばれるアイスマンは,イタリアとオーストリアの国境付近にそびえるエッツタール・アルプスの山頂付近の氷河で発見された冷凍ミイラのことです.アイスマンは,登山をしていた夫婦により偶然に発見されました.初めは遭難者の遺体と考えられましが,念のために行なわれた考古学者の検証で,この遺体は現代人のものではないことが判明しました.骨の一部を使った炭素14による年代測定の結果は,何と5,300年前の古代人の遺体でした.身長160 cm,体重50 kg,推定年齢46歳前後の男性の遺体は,氷河の中で発見されたことからアイスマンと命名されました(図).


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