見出し画像

月と重力探査

 割と朝早く出勤しますが、自宅を出る時にはまだ月が煌々と輝いていました。月は地球の衛星ですが、本星である地球との大きさが他の星々の衛星とは大きく異なります。月は衛星としては、異常に大きいのです。月の大きさは長い間ナゾでしたが、ジャイアントインパクト説で説明ができそうな状況です。大昔、原始地球に火星大の星が衝突しました。この時に、地球とこの星がいったん壊れて再構成されました。それが、今の地球と月です。

 コンピュータを使ったシミュレーションでも、天体の衝突+破壊+再構成が再現可能だそうです。真正面から二つの天体が衝突していたら、地球は粉々になって、我々は存在していないかもしれません。また、当たる場所が変われば、衛星が二つになった可能性もあるそうです。現在、月は地球から38万kmの場所にありますが、光なら1秒チョットの距離です。この月が、地球の重力に影響を与えます。それが、潮の満ち引きに関係する潮汐力です。

 重力値(厳密には重力加速度)を測定する重力探査では、時間変化する月の潮汐力は厄介なノイズです。高級な重力計は、測定場所の日時を入力することで自動的に補正してくれますが、そうでない重力計の場合は、自力で補正量を計算する必要があります。これが、潮汐補正です。この補正以外にも、重力探査では多くの補正が行なわれます。その理由は、地下資源などによる重力変化量は微小で、補正を行わないと、これらのノイズ成分に信号成分が隠れてしまうためです。

 重力補正は、測地学では重力化成とも呼ばれ、地形補正、ブーゲー補正、フリーエア補正などがあります。また、飛行機や船舶などで重力を測定する場合は、エトベス補正も必要です。重力値そのものは、(高価な)重力計があれば、比較的簡単に測定できますが、データ解析をして地下構造を推定するまでのは、各種の補正による多くの労力が必要です。

 ぶっちゃけ、重力探査はあまり好きではありません。理由は、この補正の多さです。しかし、重力探査には他の探査に無いメリットがあります。重力は地下の密度分布によって計算できますが、その根本は引力です。引力の反対は斥力ですが、重力に関する限りまだ斥力(反重力)は見つかっていません。なので、重力は正負の極性を持つ電気探査や磁気探査と違って、値が相殺されることがありません。つまり、はるか深部の密度変化でも、観測点の重力に影響します。重力の計算には、足し算しかありません。

 ただし、平均的な密度からの重力変化を考えると、正負の重力異常が生じます。このあたりが、少し理解しにくいところです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?