ミリしら物理探査#26 二つのマイグレーション
石油のことを勉強していると、意味が異なる二つのマイグレーション(migration)に出会います。どちらも石油に関係する専門用語ですが、一つは石油の成因に関する地質用語で、もう一つは物理探査のデータ解析に関する用語です。
地質用語のマイグレーションは、石油またはその前駆物質が天然に地下の岩石中を動くことをいいます。もともと、migrationには”移動”という意味があります。この石油の移動は、根源岩(石油が生成した岩石)から貯留岩(石油が貯まった岩石)に達するまでの一次移動と、貯留岩のなかを上り傾斜方向へ移動する二次移動があります。一次移動は、堆積物の深度増大に伴う圧密作用と温度上昇に起因します。貯留岩は高い孔隙率・浸透率を持っているので、二次移動は比較的容易に行なわれます。ちなみに、一度は移動によって集積した石油が、その後の地殻変動によって他の部位に移動することもあり、このような移動を再移動といいます。
次はもう一つのマイグレーションです。弾性波探査・反射法では、反射波はその到達方向によらず入射した受振点での往復走時として記録されます。そのため、これをそのまま横軸を受振位置、縦軸を往復走時として表示すると、傾斜した反射面や地下回折源からの反射波はその真の位置ではなく、その受振点直下に表示されることになります。また、その往復走時は真の深度と対応していないため、表示される記録断面は歪んだイメージとなります。例えば反射断面では、下図のように背斜構造は見掛け上大きくなり、逆に向斜構造は見掛け上小さくなります。マイグレーションは、この様な反射波をその反射点・回折点に対応する水平位置と垂直往復走時に移動するためのデータ処理です。マイグレーション処理を行なうと、地層の起伏の形状や、断層の位置・傾斜の把握をより正確に行えるようになります。
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