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ミリしら物理探査#25 探査深度と分解能

 気付いてみれば、ここ最近は物理探査に関連した記事を書いていませんでした。そこで今回は、物理探査法を選択する場合の基本となる『探査深度』と『分解能』の説明をします。この話は、別の記事でも触れたかもしれませんが、重要なので繰り返し説明します。

 まずは用語の意味からです。『探査深度』は可探深度とも呼ばれ、”どの深さまで探査が可能か”を示す指標です。英語では”penetration depth”と言います。地下に存在する天然資源や人工物を探査する場合、どの深さに存在するのかを予め想定して探査法を選びます。例えば、遺跡探査であればせいぜい10m程度の深度で十分です。また、基礎地盤調査のような土木調査の場合は、50~100mが目安です。金属鉱物資源の探査なら、人間が到達できる500~1000m程度が一応の目安です。石油や地熱などの流体資源の場合は、掘削が可能な数1000mが目安です。地球のマントルやプレートに関連した地球物理学的な調査では、数100kmを超える場合もありますが、その深さまでは今の技術では掘削できないので、直接的な確認(検証)はできません。

 次は『分解能』です。分解能は、どの程度の大きさ(範囲)まで識別できるかを表わす指標です。英語では”resolution”と言います。例えば、遺跡探査の遺物などは数10cm程度しかないので、少なくとも10cm以下の分解能が必要です。また空洞探査などでは、空洞の直径が数m程度であることを考慮すると、1m程度の分解能は必要です。また、対象が鉱物資源になれば、鉱床の賦存状態にもよりますが、10~50m程度の分解能は欲しいところです。漁網で魚を獲ることを想像してみて下さい。マグロのような大きな魚なら、目の粗い網でも大丈夫ですが、シラスのような小さな魚を獲る場合は目の細かい網が必要です。

 このように、探査対象に応じて探査深度と分解能を考慮して、最終的に探査方法を選択します。しかし、探査深度と分解能を同時に満足することはできません。すなわち、探査深度を深くしようとすれば必然的に分解能は低下します。また、分解能を上げようとすれば、深部の探査は難しくなります。このような二者の関係を、二律背反の関係、またはトレードオフの関係といいます。タイトル図のシーソーのように、どちらかを向上させれば、もう一方が低下します。両者を同時に向上させることができる探査法は、今のところありません。

 遺跡探査では、地中レーダ探査がよく使われますが、探査深度が数m程度です。しかし、使用するパルス状電磁波の周波数に依存しますが、分解能は数cmと高分解能です。深部の地下構造探査には、地磁気地電流法(MT法)が使われますが、この方法では条件が良ければ数100km程度の大深度の探査が可能です。ただし、分解能はせいぜい数kmしかありません。つまり、地下数100kmの深部までの探査ができるが、その誤差は数km程度あるということです。

 物理探査では、探査対象に応じた最適な探査法の選択が重要です。物理探査では、最適な物理探査を選択できれば、一人前の”物探屋ぶったんや”です。最後に問題です。地下数10mの場所に埋められた埋蔵金(千両箱)を探査するには、どのような探査法が良いでしょうか?。

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