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大雪の思い出(1)

これは半世紀前の大雪の思い出です。私が育った大分の田舎は、瀬戸内海に面していて温暖なので雪は降っても滅多に積もりません。なので、子供の頃の夢は、テレビなどで見た”かまくら”を作ることでした。しかし、積もっても数センチくらいの降雪量では、かまくらを作ることは到底できません。

かまくらとは、秋田県、新潟県など日本の降雪地域に伝わる小正月の伝統行事です。タイトル画のように、雪で作った雪洞の家の中に祭壇を設け、水神さまを祀ります。本来は、このような伝統行事でつくったものがかまくらなのですが、いまでは伝統行事で作られるものに限らず、雪洞自体がかまくらと呼ばれています。かまくらの語源は、形がかまどに似ているから竃蔵であるとする説や、神の御座所・神座かみくらが転じたものであるとする説などがあるそうです。

話は50年前に遡ります。その日は前日からの寒波で、朝起きると一面が雪景色でした。積雪量は10センチくらいで、雪国なら全然大した量ではありませんが、それまでの人生で最大の降雪量でした。いつもの時間に、慣れない足取りで雪を踏みしめながら中学に向かって歩いていると、近所の同級生のオバちゃんが、「今日は雪で学校が休みだよ」と教えてくれました。雪国では考えられないでしょうが、この地域で滅多にない積雪のため、たった10センチの積雪で市内の小中学校が全て休校になりました。

学校が休校だと聞いて、来た道を急いで引き返しました。「これだけ雪があるなら、かまくらが作れるかも?」と思って、庭や道路の雪をかき集めました。しかし、どんなに集めてもせいぜい1mくらいの小さな小山しかできませんでした。それも、チョッと土の混じった汚い雪山でした。何とか集めた雪山の下部をスコップで掘って、ミニチュアのかまくらを作りました。本当は、かまくらの内部に入るのが夢でしたが、足先を入れるのがやっとでした。

雪国では簡単に作れるかまくらですが、南国九州では夢のまた夢です。かまくらの中に入る夢は、還暦を過ぎた今でもまだ実現していません。

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