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高温超電導

 一般に高温超伝導とは、ベドノルツミュラーが1986年に発見したLa-Ba-Cu-O系の超伝導物質と、その後続々と発見された転移温度が液体窒素温度(−195.8 °C, 77 K)を越える一連の銅酸化物高温超伝導物質と、その超伝導現象のことを指します。この高温超伝導を示す物質のことを高温超伝導体といいます。高温超伝導における高温とは、従来の超伝導体と比較すると高温である−200〜−100°C程度の温度を意味しています。なお、ベドノルツとミュラーはこの研究業績により、1987年のノーベル物理学賞を受賞しました。

 超伝導体は外部磁場を内部から完全に排除する完全反磁性(マイスナー効果)という性質を持っています。常伝導状態にある場合、磁場は物質の内部を突き抜けます。しかし、一旦超伝導状態に転移すると、内部を突き抜けていた磁場が外に押し出され、超伝導体内部には磁場がない状態になります。 また、磁場がない環境にある超伝導体に磁場を加えても、磁場が内部に侵入することはできません。この完全反磁性の性質が超伝導磁力計の原理に利用されています。JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)では、SQUITEMと呼ばれる、超電導磁力計を利用した電磁探査法を開発しています。

 室温超伝導(room temperature superconductivity)は、超伝導になる転移温度がおよそ300Kの室温程度であることを意味しています。室温超伝導を示す物質を探索する研究は盛んに行なわれていますが、まだ発見されていません。過去には、室温超伝導を示す物質を発見したとの報告が複数なされていますが、いずれも再現できずに室温超伝導とは認知されていません。現在最も常温に近いのは高圧下の硫化水素で、約200 GPa・150 Kで超電導状態になります。

 最近の研究では、水素、炭素、硫黄を含む混合物を高圧下で炭素質水素化硫黄と呼ばれる物質に結晶化し、超伝導状態になったことが確認できたそうです。この時の圧力は267GPa(ギガパスカル)で、温度は287.7K(摂氏15度)でした。ほぼ室温に近い温度でしたが、大気圧の260万倍の超高圧下なので、実用化にはまだまだ時間がかかりそうです。

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