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地球に『ゼロ磁場』の場所はありません

 ”ゼロ磁場”とは、”磁気のN極とS極がお互い拮抗して打ち消しあい、磁力が存在しない状態”を言うそうです。ゼロ磁場の場所は、プラスとマイナスのエネルギーの均衡がとれた”気の整った場所”と言われ、パワースポットの一種だと考えられているそうです。

 パワースポットの正確な定義がわからないので、パワースポットは否定できませんが、ゼロ磁場は否定できます。一見もっともらしく聞こえますが、地球上にゼロ磁場の場所はありません。なぜなら、地球には”地磁気”と言う大きな自然の磁場が存在しているからです。地球は一つの大きな磁石と考えることが出来て、この”大きな磁石”による磁場が地磁気の正体です。地磁気の大きさは、場所によって変わります。我々が住む日本は、北半球中緯度にありますから、約47,000 nT(ナノテスラ)の大きさの全磁力を持ちます。

 日本でも、場所によって全磁力の大きさは変わるし、方向(偏角や伏角)も変わりますが、全磁力が自然状態でゼロになる場所はありません。しかし、ちょっとした知識があれば、”ゼロ磁場”の方向を探すことは可能です。磁場は、質量(重さ)などのスカラー量とは異なる、大きさ方向を持ったベクトル量です。なので、地磁気の正確な方向を探して、その方向と直交する磁場成分を測定すれば、見掛け上、磁場がゼロになったように見せかけることはいくらでもできます。ただし、この場合でも、磁場がゼロになったわけではなく、その方向の磁場成分がゼロなだけです。手前味噌になりますが、地磁気のことは磁気探査の章で割と詳しく説明していますので、興味があれば読んでみてください。

 この記事は、『ゼロ磁場』を信じている人たちの夢を壊すことが目的ではありません。信じることで、気持ちがリラックスできるのなら、こんなに良いことはありません。一種のプラセボ(偽薬)効果というやつですね。念のために説明しておきますが、プラセボ効果とは、”効き目ある成分が何も入っていない薬でも、患者さん自身が、自分が飲んでいる薬は効き目があると思い込むことで、病気の症状が改善することがある”ことを言います。


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