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電磁探査

 デンマークのエルステッドは,実験中に電池のスイッチのオンオフでそばに置いた方位磁針の方角が変わることに気づきました。これが電気と磁気の直接的関係を示す最初の証拠となりました。その後,エルステッドは電流の流れる導線の周囲に円形の磁場が形成されるという発見を公表しました。 フランスのアンペールは、もし電線に流れる電流がコンパスの針に磁力を及ぼしているなら、このような2本の電線は磁気的に相互作用をするはずだと考えました。この考えが電気力学の基礎となり,また19世紀の物理学に大きな影響を与えました。 ファラデーは、空芯のコイルの中で磁石を動かすと電流が流れる電磁誘導現象を発見しました。また、この実験で磁場の変化によって電場が生じることが明らかとなりました。これにより,ファラデーは電気と磁気が相互作用するという電磁場の基礎理論を確立しました。その理論を後にマクスウェルが発展させました。

 電磁探査は,地層を構成する物質の比抵抗の違いに着目し,地下の構造や状態,地下資源の存在などを調査する探査法です。電磁探査では,人工または自然の電磁場変動によって生じる電磁応答を利用します。 電磁探査は,測定される信号の成分により周波数領域法時間領域法に区分されます。周波数領域法では,測定する信号をいろいろな周波数に分け,その各々の周波数における信号の強度や位相の変化などを測定します。周波数領域の代表的な探査手法としては,人工の信号源を使ったスリングラム法や,自然の電磁場信号を使った地磁気地電流法(MT法)などがあります。スリングラム法は,埋設管や不発弾などの低比抵抗体の検出能力に優れています。また,MT法は地球上で発生する磁気嵐や雷などによる電磁場変動を利用して地下構造を探査する方法で,地下資源や地熱貯留層などの探査に利用されています。一方,時間領域法では,ある時刻以降での受信信号の過渡応答を測定します。時間領域の代表的な探査手法としては,人工信号源を用いたTEM(TDEM)法がよく知られています。

 ループループ法は,送信ループコイルと受信ループコイル間の電磁誘導現象から地下の比抵抗構造を推定する手法です(タイトル図)。送信ループから時間変動する磁場を発生させると,ファラデーの電磁誘導の法則に従い地盤中に誘導電流が発生します。そしてこの電流は,アンペールの法則により周辺に新たな磁場を発生させます。この新たな磁場は最初の磁場の時間変動を妨げる向きになっていてます。誘導電流は渦を成すように流れるので渦電流と呼ばれています。 送信ループを流れる電流によって直接生じる磁場はを1次磁場,誘導電流がつくる新たな磁場を2次磁場と言います。1次場は,地盤からの影響を含まず,純粋に送信ループを流れる電流値,ループの面積,巻き数,そして送信ループからの距離によって決まります。2次磁場は誘導電流の大きさや分布に依存し,それは地盤内の1次磁場の分布とその時間変化,そして地盤の比抵抗分布の関数となります。ループの配置には,同じ平面内にループを置く共面配置や,ループの中心軸を同じにする共軸配置などがあります。

 地球という導体中で磁場が変動すれば,その変動を妨げるように電流が発生します。フランスのCagniardと旧ソ連のTikhonovは,地表でお互いに直交する電場と磁場を測定することで,大地の比抵抗が推定できることを発見しました。この方法は地磁気地電流法(MT法)と呼ばれています。MT法では,非常に低周波のマイクロパルセーションから,数kHzくらいまでの周波数範囲の自然電磁場の変動を利用します。MT法は深部の探査に適しており,地表300m程度から数百km程度の深さを調査することができ,石油探査地熱探査金属鉱床探査などの地質構造探査などに使われるています。また,低い周波数帯域を用いることによって,地殻や上部マントルの構造探査に用いられることもあります。


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