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ミリしら物理探査#34 遺跡の探査

 Wikipediaには、”遺跡とは過去の人々の生活の痕跡がまとまって面的に残存しているもの、および工作物、建築物、土木構造物の単体の痕跡、施設の痕跡、もしくはそれらが集まって一体になっているものを指す”と書いています。つまり、遺構や遺物が過去の痕跡として残存している場所が、遺跡になります。

 遺跡探査では、遺跡の地下にある遺構や遺物を探します。遺構には、古墳・住居址・水田跡などがあり、遺物には鉄剣・銅鏡・馬具などがあります。物理探査でこれらの遺構や遺物を探す場合には、遺構や遺物が持つ物理的な性質(物性値)を把握する必要があります。

 例えば金属製の遺物であらば、磁気探査や電磁探査が有効です。特に鉄製品が埋設されている場合には、磁気探査が有効です。鉄などの強磁性体は地磁気によって誘導磁化されるので、その場所が磁気異常として検出できるのです。また、地下浅部の小さな埋設物なら、地中レーダ探査が有効です。地中レーダ探査の探査深度は2-3mと浅めですが、分解能は高く、アンテナの中心周波数にもよりますが、数十センチ程度の埋設物が識別できます。

 ただし、大型古墳のように遺構の規模が大きい場合には、磁気探査や地中レーダ探査は有効ではありません。古墳中の埋設施設である石室を探す場合には、電気探査・比抵抗法が有効です。比抵抗法は分解能では地中レーダに劣りますが、探査深度は電極間隔で調整可能です。比抵抗法を使えば、深度5-10mにある石室(空洞)でも、検出することが可能です。

 遺跡探査では、対象となるモノの物性値や規模を考慮して、探査方法を決定する必要があります。適切な探査方法が選択できれば、その遺跡探査は勝ったも同然です。

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