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研究不正 学位の取り消し

あってはならないことですが、また研究不正が明らかになりました。

名古屋大は2023年2月14日に、学位論文に捏造ねつぞう改竄かいざんがあったとして、理学研究科の元大学院生に授与した修士と博士の学位を取り消したと発表しました。名古屋大によると、不正が確認された論文のうち、博士論文は『グラフェンナノリボン』と呼ばれる炭素材料に関する研究だそうです。この研究成果は「世界初、グラフェンナノリボンを完全精密合成」としてNatureにも発表されていたようですが、捏造&改竄のニセの成果だったようです。

最先端の研究には、往々にして研究不正の危険が潜んでいます。そろそろ記憶から消えかかっていますが、STAP細胞の研究で早稲田大学のOさんの博士号が取り消されています。名古屋大学だけでなく、これまでに東大、京大、阪大などの有名国立大で学位の取り消しが行われたことがあります。これは大変不名誉なことです。

不正を働いた研究者に、同情の余地は全くありませんが、不正を暴く/監視する体制の脆弱性にも問題があります。一般的に学位論文(博士論文)の審査は、大学院の研究科単位で行われますが、実際の審査作業には、主査と呼ばれる大学院生の指導教員の裁量に大きなウエイトがあります。新しい研究は、その分野に詳しい研究者にしか分からないことが多いので、必然的に指導教員任せになってしまうのです。

今日、私が担当する博士課程の学生の審査が終わりました。これから正式な書類等を提出する必要がありますが、3月修了に何とか間に合いそうです。ホッとすると当時に、他人事ではないこのニュースには、考えさせられることが多いと思いました。ちなみに、学部は”卒業”ですが、大学院の場合は”修了”と言います。

『他山の石』という格言があります。これは、中国最古の詩集である詩経しきょうにある故事に由来する言葉だそうです。元々の意味は「よその山から出た粗悪な石でも、自分の宝石を磨くのに利用できる」で、このことから「他人のつまらぬ言行も、自分の人格を育てる助けとなる」という意味で使われています。

この研究不正は本来あってはならないものですが、”他山の石”としなければなりません。

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