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千葉の時代 チバニアン

  令和2年1月17日に、世界中で使われる地質年代に”チバニアン”が刻まれました。地球物理学や地質学の話題がニュースになることはあまりありませんが、地球科学に関係ある学問を研究している端くれにとっては、画期的なニュースです。しかし、はじめて”チバニアン”と言う言葉を聞いた時には、何かの悪い冗談だと思いました。”インディアン”と同じ響きのある”チバニアン”には、どうもシックリきませんでした。

 誕生から46億年という長い歴史を持つ地球は、いくつもの時代に分けられています。そのなかでも、恐竜がいたジュラ紀白亜紀などが有名です。映画『ジュラシックパーク』はTVでも何度も放送されているので、知っている人も多いと思いますが、”ジュラシック”というのは”ジュラ紀の”という意味です。ただし、ジュラシックパークには、トリケラトプスなどの”白亜紀の”恐竜も紛れ込んでいます。

 ほとんどの時代はすでに名前が決まっていますが、まだ決まっていない時代もあります。地球の時代を分けるとき、生物の出現・絶滅など地球規模の大きな出来事を示す化石が使われてきました。地球上に多細胞生物が現れたエディアカラン以降、少なくとも5度の大量絶滅と、それよりは若干規模の小さい絶滅が数度あったと考えられています。生物の出現・絶滅の他にも、最近では地磁気の逆転が起こった時期も、それに合わせて使われています。

 千葉県市原市田淵にある地層は、一番新しい地磁気逆転の記録が世界で最もよく残っているため、時代を分ける境界がよくわかる地層として、世界的に認められました。このことにより、いままで名前がなかった約77万4千年前から12万9千年前までの時代が、ラテン語で”千葉の時代”を意味する”チバニアン”と呼ばれることになりました。地磁気の時代区分には、日本人の松山先生の名前を冠した松山期がありますが、日本の地名にちなんだ名前が地質年代につけられることは初めての快挙でした。

 地磁気反転をテーマにした小説に、伊予原 新さんの『磁極反転の日』があります。私は地磁気反転にある程度の知識がありますが、その知識がない人でも楽しみながら地磁気反転(磁極反転)のことが学べる面白い本でした。私が買った時は840円でしたが、今は中古本しかないようで、価格も高騰しています。


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