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弾性波探査

 弾性波は,弾性体を伝わる波で大きく分類すると2種類に分けられます。一つは震源から3次元的にあらゆる方向に伝播していく実体波と,もう一つは固体・気体間や液体・気体間の境界で2次元的に伝播する表面波です。実体波には,縦波であるP波と,横波であるS波があります。縦波か横波かは,振動の方向が進行方向に対して平行になっているか,直交しているかで判断できます。縦波の振動方向は進行方向に平行で,振動方向に振幅の大きい場所(粗)と小さい場所(密)が生じるので,疎密波とも呼ばれます。表面波も2種類有り,上下方向に楕円を描くように回転しながら振動が伝播するレイリー波と,蛇のようにうねうねと振動するラブ波があります。

 弾性波探査は,人工的な地震波を利用した方法で,地震探査や地震探鉱などとも呼ばれています。弾性波探査では,火薬・ダイナマイト・機械震源・圧縮空気・放電などによって地中や海面で人工地震を発生させて地下や海底下へ地震波を送り,地層の境目で屈折したり反射したりする弾性波の伝播状況を観測して,地質構造や地下の状態を調査します。弾性波探査には,屈折波の走時を利用した屈折法と,反射波をの往復時間や振幅を利用した反射法があります。反射法は石油探査で最も使われている探査法で,屈折法は基礎地盤調査などで使われています。最近では,自然の微動を観測して地下構造を推定する微動アレイ探査なども使われています。

 反射法は,地表の近くで人工的に発生させた振動(弾性波)が下方に進行し,音響インピーダンス(弾性波速度と密度の積)が変化する地下境界面で反射して,再び地表へ戻ってくる反射波を地表に展開した受振器(ジオフォン)で測定し,収録された記録を処理・解析するで地下構造や地質構造を解明する方法です。主に石油・天然ガス探査の分野で利用され,大きな成果を挙げています。 海上の反射法では,圧搾空気の放出を利用したエアガンが震源として使われ,測定には海水の圧力変化を検出できるハイドロフォンと呼ばれ受信器を使用します。海上の測定にはハイドロフォンを組み内蔵したケーブルを海底に設置して測定する方法や、ストリーマと呼ばれる測定ケーブルを船で曳航して測定する方法があります。

 屈折法は,地中を伝わる弾性波の中で,地層の境界面で屈折し,そのあと地層の境界を伝わり,再び屈折して地表に戻ってくる波を利用して地質構造を推定する方法です。地中を伝播する弾性波にはP波やS波がありますが、屈折法ではP波の初動を利用した測定方法が一般的です。主に土木・建設の分野で利用されています。屈折法で求められる弾性波速度は,地盤強度と関係があるので,岩盤分類や地山区分の情報として利用されており,構造物の設計・施工時の有益な情報となっています。このように屈折法は,土木構造物や資源開発および一般地質構造調査などを目的として広範囲に利用されています。


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