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雨粒と重力加速度

 高度が数千mもある上空から降ってくる雨粒は、空気が無い真空状態なら、猛烈な速度で落下してくるはずです。これは、高校の物理学で習う重力加速度を知っていれば、比較的簡単に計算することができます。上空2000mから雨粒が落下してくると仮定して、大雑把に計算すると、地上では200m/sほどの落下速度になります。最大風速54m/s以上が”猛烈な台風”なので、その約4倍の速さで雨が落下することになります。

 しかし、実際にはそんなことにはなりません。これは、空気による抵抗がブレーキの役目をして、途中から速度が一定になるからです。この時の抵抗を粘性抵抗と言います。流体の持つ粘性抵抗は、流動性の低いものが大きな抵抗を持ちます。例えば、水<水飴<マグマのような関係が成立します。空気は気体なので、液体の水に比べると希薄な流体ですが、それでも大きな抵抗が雨粒にかかります。そのため、雨粒は我々が想定している”しずく型”をしていません。下の写真のように、例えは悪いのですが”肉まん型”をしています。

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 粘性抵抗は、速度に比例して大きくなるので、重力加速度の影響で雨粒の速度が増すと、どんどん大きな抵抗が落下方向と逆向きに働きます。この現象は、簡単な微分方程式で記述できて、力学演習などの教科書にも載っています。この方程式の解は、工学系の大学生なら解けて欲しい問題です。ずいぶん昔の話ですが、この雨粒の微分方程式を、”ラプラス変換”を使って解く問題を、大学院の入試問題として出題したことがありました。

 この問題に興味がある人は、微分方程式を導くところから始めて、解いてみて下さい。あなたは、何種類の解き方が思い付きますか?。

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