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ぶったん偉人伝#3 シュルンベルジェ兄弟

  石油の探査を実施して、油田の有望地が決まれば試掘井を掘削します。この試掘井が掘り終わると、シュルンベルジェ社の出番です。

 シュルンベルジェは、石油井を詳しく調べる検層サービスの世界ナンバーワンの企業です。この会社は、技術担当の兄・コンラッドと、経営担当の弟・マーシャルが設立した、油田探査および各種油田探査用計測機器の開発・製造をコアビジネスとする、最大級の多国籍企業です。現在、シュルンベルジェ社は、フランス・パリとアメリカ合衆国・ヒューストンに本社を構えています。以前、シュルンベルジェ社の人と話したことがありますが、「我が社が雇用している従業員の国籍は100か国以上で、真の多国籍企業だ」と自慢されていました。

 シュルンベルジェ(Schlumberger)は、名前の綴りからもわかるように、アルザス出身のドイツ系フランス人(アルザス人)です。アルザス地方はフランスとドイツの間にあり、戦争のたびにドイツになったりフランスになったりする複雑な地域です。シュルンベルジェ社が多国籍企業になったのは、シュルンベルジェ兄弟の出身地(生い立ち)に関係しているのかもしれません。

 兄のコンラッドは、フランスの大学で物理探査を学んだ生粋の技術者(研究者)です。シュルンベルジェ社は、兄・コンラッドの技術の上に成り立っていました。比抵抗法には、シュランベルジャー法というのがありますが、これはコンラッドが考えた比抵抗法の電極配置です。ちなみに、シュランベルジャーはシュルンベルジェの英語読みです。日本の現地法人は昔は「日本シュランベルジャー」でしたが、今は「シュルンベルジェ」になっています。

 1926年に創業した時のシュルンベルジェ社の最初の名前は、Société de Prospection Électrique でした。直訳すると「電気探査の会社」ですので、このことからもコンラッドの技術が基盤になっていたことがわかります。その後、この会社は電気探査の技術を坑井内の検層技術に生かして、世界各国で検層事業を展開していきました。シュルンベルジェ社は、石油の開発に欠かせない物理探査系の大企業です。

 現在は、シュルンベルジェ家が経営しているわけではありませんが、大株主であることには変わりありません。ずいぶん昔の新聞記事でしたが、シュルンベルジェ家の一人が世界長者番付の10位以内に入っていたことを覚えています。シュルンベルジェ社はそれくらいの大企業です。

 シュルンベルジェ社の技術はもちろん凄いのですが、もっと凄いのはこれまでのノウハウの蓄積です。シュルンベルジェ社は、蓄積された多くのデータを使って、常に検層技術や油層の評価をアップデートしています。我々が安定した石油の供給を享受できるのは、シュルンベルジェ社のお陰でもあるのです。

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