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世界で最も汚染された川

日本と同じ島国であるインドネシアには、数多くの河川が流れています。そのなかでも、特に悪名高いのが西ジャワ州を流れるチタルム川です。世界銀行が2008年ごろ、チタルム川を”世界で最も汚染された川”と宣言して以来、世界のメディアや環境保護団体などが、この川をそう呼ぶようになりましたた。タイトル画は、ごみで覆われた川面に浮かぶ船で、この写真からも、汚染の具合が尋常ではないことを端的に表しています。これまでの調査では、チタルム川の水に含まれる有害化学物質は警戒レベルに達していて、河川水に含まれる鉛の濃度は、アメリカの安全な飲料水の基準の1000倍にも達しています。

西ジャワ州の州都、バンドンのワヤン山からジャワ海へと流入するチタルム川は、全長286キロメートルで西ジャワ州で最長の川です。汚染前までは、飲用・洗濯の水源として、ジャカルタ、バンドンなどの近隣大都市の3000万人もの住民の暮らしを支える重要な役割を担っていました。また、420haに及ぶ農地の灌漑用水としても利用されていました。しかし周辺が工業化されるにつれて、チタルム川は汚染による大打撃を受けました。

数十年に及ぶ浄化政策が失敗した結果、チタルム川は衛生上の非常事態に直面するまでになりました。このことに危機感を覚えたインドネシア政府は、2025年までにチタルム川の水を飲めるようにするという計画を打ち出しましたが、今のところ実現は到底不可能なようです。

他国の現状を憂うのは仕方ありませんが、実はかつて日本も同じような状況だったのです。福岡市の中心を流れる那珂川は、今ではかなりきれいになっていますが、半世紀ほど前の昭和の高度経済成長の時代、上流の製紙工場からの工業排水でかなり汚染されていました。福岡市出身の知人の話では、那珂川には背骨の曲がった魚がたくさん泳いでいたとのことでした。かつての四大工業地帯である北九州市の状況はさらに深刻で、市内を流れる紫川は、一時期”死の川”と呼ばれていました。現在、北九州市が環境に配慮したエコタウンを目指しているのは、この時の反省があるからです。

チタルム川を短期間で綺麗にすることはできませんが、時間をかければ浄化は可能です。まずは、近隣住民の意識を変えることから始めて、当たり前ですが”ごみを捨てない”、”生活排水や工業排水を川に流さない”などの地道な取り組みが必要です。

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