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物理探査の次元について 2次元と3次元

言葉だけで表現するのは難しいですが、次元は空間の広がりを表わす一つの指標です。数学では、線は1次元、平面は2次元、立体は3次元と認識されます。我々が直接認識できる空間は、3次元までです。しかし、物理学では空間に時間軸を含めた4次元も出てきます。さらには、理論物理学などで出てくる超ひも理論では、10次元や11次元が出てきます。

物理探査でも1次元、2次元、3次元と三種類の次元が出てきますが、これまでの次元と少し考え方が異なります。物理探査で扱う地下(場合によっては空中も)は、物理的には3次元空間です。ただし、物理探査では地下の物性値の変化する方向が基準になって、地下構造モデルの次元が決まります。

例えば、深度方向だけに物性値が変化し、水平方向には変化しない場合は、1次元構造と考えます。また、深度方向(z方向)と1つの水平方向(例えばx方向)の物性値が変化すれば2次元構造と考えます。3次元構造というのは、3つの方向(x, y, z)すべてで、物性値が変化する地下構造を表わします。

物理探査では、空間は常に3次元ですが、物性値の変化する方向が基準となってモデルの次元が決定します。物理探査では地下の物性値の分布が重要ですから、このような考え方で次元を決めています。要するに、物理探査では3次元空間は当り前で、3次元空間を占める物質(岩石や土壌)の物性値の分布が次元の根拠となります。

私が大学院生の頃、大型計算機を使った”1次元構造モデルのデータ解析”が出来るようになっていましたが、”2次元構造モデルのデータ解析”は、研究レベルで一般的ではありませんでした。その頃の研究論文では、2次元の順解析(シミュレーション)や逆解析(インバージョン)が主要なテーマになっていました。その後、コンピュータの能力が向上するに伴って、複雑な計算を高速で出来るようになりました。

いまでは、高性能なPCを使えば3次元の逆解析まで出来るようになっていますが、まだまだ時間がかかります。地下構造は複雑ですから、3次元解析が必要なのは当然です。コンピュータの能力の制限などもあり、これまではお手軽に実施できるものではありませんでした。しかし、ここ最近は、GPGPUなどの利用やスパコンの利用が比較的簡単にできるようになったので、3次元解析の研究は進んでいます。

私が使い始めた頃のPCのメモリは、kB(キロバイト)単位でした。しかし今では、GB(ギガバイト)単位が当たり前です。昔と比較すると約1,000,000倍にもなっています。未来の予測は難しいですが、あと10年もすれば”スマホで3次元解析”が出来るようになるかもしれません。


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