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壮大なニックネーム

 ニックネーム(nickname)の語源は、中世後期に使われていたekenameといわれています。 “eke” とは、”also” とか “in addition” という意味で、”正式ではない”名前のことを表していたということです。このekenameを単数で使う場合の、”an ekename”の区切り方を間違えて”a nekename”となり、さらに時代とともに音はそのまま残って”a nickname”になったということです。ニックネームは、何とも不思議な変遷をたどっています。

 区切りを間違えた結果生まれたと言われている単語は他にもあって、その代表例がエプロン(apron)です。エプロンは本来はネプロン(napron)だったのですが、”a napron”が”an apron”と区切る位置を間違えて”apron”という単語になりました。ニックネームの場合は、nが付加された例ですが、エプロンはnが分離した例です。

 英語の発想とは全く違いますが、日本語では丁寧語が重なってできた御御御付おみおつけという言葉があります。意味は汁物ですが、元々はつけという単純な言葉に、時代と共に””が三度も重なって付加されました。具体的には、つけ御付おつけ御御付みおつけ御御御付おみおつけといった変遷をたどりました。数奇な運命です。

 ニックネームはよく綽名あだなと訳されますが、厳密には違います。ニックネームは、実名に対する愛称・略称です。例えば、多くの人が知っているビル・ゲイツの “Bill” もファーストネーム由来の愛称です。この場合は、正式な名前であるWilliamが愛称Billです。愛称といっても、名前として通用しています。その他にも、Tommy⇒Tom(トム)、Anthony⇒Tony(トニー)、Benjamin⇒Ben(ベン)など、定番の愛称が数多くあります。

 その昔、物理探査学実験を担当していた頃、実験の最終日にそれまでの実験結果の発表会を班毎に実施していました。いきなりの実験発表では、会場の雰囲気が固いので、みんなの緊張をほぐすため、”これまでに体験した面白い綽名”を班毎に話してもらうことにしました。その中で最も印象に残っている綽名が『油田ゆでん』でした。なんとも壮大な綽名『油田』の由来は、その綽名の主の”顔面が脂性で、常に脂取り紙を携帯していた”ためだそうです。そんな綽名を付けられた人には同情しますが、はじめて聞く綽名にインパクトは絶大でした。

 生徒同士で付ける綽名は仕方ない面も在りますが、身体的な特徴を揶揄する悪意に満ちた綽名はいけません。もし、教員が付けたりすれば、それこそ誹謗中傷やアカハラ・パワハラになってしまいます。もちろん教員でなくてもいけません。ご注意を!。

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