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第三の平均 調和平均

相加平均や相乗平均は、高校数学でもよくでてきますから、正確な意味は知らなくても、見たこと/聞いたことくらいはあるでしょう。相加平均は、我々が普段よく使っている、いわゆる”算術平均”です。相加平均は、全ての値を足し合わせて、データ個数で割れば簡単に計算することができます。ただし、データ数が極端に大きな場合は簡単ではありませんが・・・。

相乗平均は、N個のデータの値を全て掛け合わせ、最後にN乗根を計算すれば求められます。これは、対数空間での算術平均に相当します。ただし、この場合はデータ値すべてが正値である必要があります。相加平均と相乗平均はポピュラーでメジャーな平均ですが、”第3のビール”のように”第3の平均”というのもあります。それが調和平均です。

調和平均はタイトル画にあるように、率や比に対する平均を考える場合に使われます。例えば速度の平均値を計算することにします。乗り物がある距離を時速 60 km で走り、それから同じ距離を時速 40 km で走った場合、全体の走行時間と走行距離から平均速度が求められます。この場合の平均速度が速度の調和平均の値になります。計算結果は時速 48 km で、算術平均で求められる時速 50 km とは異なります。この例からもわかるように、調和平均は相加平均より小さくなります。

調和平均の計算は、物理探査のなかにも出てきます。電気探査・比抵抗法では、地下の電気の流れ難さ(比抵抗)を測定します。この比抵抗の平均を求めたい時には、調和平均が役立ちます。例として2つの電気抵抗の平均を紹介します。抵抗 x(例えば 60 Ω)と抵抗 y(例えば 40 Ω)を並列に接続すると、速度の平均の例と同じように、 x と y の調和平均(合成抵抗)は48 Ωになります。

物理探査のデータ解析では、相加平均(算術平均)、相乗平均、調和平均の特徴をうまく利用します。現在開発中のMT探査機のデータ解析には、相乗平均を使っています。


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