"平均"にご注意
”平均”とは、大小・多少などの差が少なく、揃っていること。また、そうすることを意味します。統計や数学では、いくつかの数や量の中間的な値を求めることを指します。一般的には、数量の総和をその個数で割る相加平均を平均と考える場合が多いようです。しかしその他にも、相乗平均・調和平均などがあります。
相乗平均は、対数空間での平均を取るもので、バラツキの大きな数量の平均を求める時に役立ちます。調和平均は聞き慣れない平均かもしれませんが、数量の逆数の平均です。調和平均は、速度を変えて運転した時の平均速度の計算などに利用されます。
平均は、平均気温・平均身長・平均体重などのように形容詞的に使われます。近年、地球温暖化が進んでいると報道されることが多いようですが、その時の根拠になっているのが平均気温の上昇傾向です。少し前に「身長170cm未満の男性には人権がない」と発言して炎上していた人がいましたが、日本人の平均身長は170.8㎝くらいですから、この発言の仮定が正しいとすると、日本人男性の約半数には人権が無いことになってしまいます。
平均値は意味のある統計量ですが、母集団を意識しないと確からしい値を反映しない場合があります。例えば日本人全体の平均年収は440万円程度ですが、年代が違えば平均年収は変わって来ます。最も多いのは50代で、これより若い/年を取ると年収は下がっていきます。また、少ない母集団の中に極端に高い/低い年収の人がいると、平均値は大きく変わります。例えば、10人のうち9人は400-500万円の年収なのに、一人だけ億単位の年収があると、平均値は大きく跳ね上がってしまいます。
このように、単純な相加平均では”確からしい推定値”を反映しない場合があります。こんな時に使われるのが中央値です。中央値は大小順に並べたときに、ちょうど真ん中の順位にある値となります。奇数の時は一つに決まりますが、偶数の時は中間順位の2つの平均値が中央値となります。
現在、MT法のデータ処理プログラムを開発中ですが、このプログラムの中ではパラメータの性質に合わせて、相加平均や相乗平均を使い分けています。統計学は、データの推移を予測/推定を行なう場合に便利な道具ですが、使い方を誤るとおかしな結論を導きかねません。平均を考える時には、母集団を意識しましょう。
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