オイラー予想 大数学者も間違えることがある。
スイス生まれのレオンハルト・オイラーは、18世紀の数学界の中心人物であり、続く19世紀の数学の厳密化・抽象化時代の礎を築いた大数学者です。数学者としての膨大な業績と、後世の数学界に与えた影響力の大きさから、19世紀のカール・フリードリヒ・ガウスと並ぶ数学界の二大巨人の一人とも呼ばれています。オイラーは右目を失明していましたが、あまりにも数学の研究に没頭し過ぎたため、その後に左目も失明しました。しかし数学への情熱は冷めることなく、亡くなるまで研究をやめることはありませんでした。
そんな大数学者オイラーでも、間違うことはあります。それが『オイラー予想』です。オイラー予想とは、フェルマーの最終定理を発展させた数学的予想ですが、現在では反例が示されたことによって、この予想が正しくなかったことが示されました。
オイラーは、フェルマーの最終定理(当時はフェルマー予想)の n = 3 の場合、すなわち x^3 + y^3 = z^3 を満たす自然数の解 (x, y, z) は存在しないことを証明しました。ここまでは、順調でした。しかし、オイラーはここから、フェルマーの最終定理を拡張して、x^4 + y^4 + z^4 = w^4 を満たす自然数の解 (x, y, z, w) は存在しない、と予想しました。また同様に、 x^5 + y^5 + z^5 + w^5 = v^5 や x^6 + y^6 + z^6 + w^6 + v^6 = u^6 を満たす自然数の解も存在しない、と予想しました。これが、いわゆる”オイラー予想”です。
オイラーの発表以降、比較的小さな自然数では反例を見つけることができず、オイラーが大数学者だったこともあり、長い間正しいと信じられてきました。しかし1966年に、レオン・J・ランダーとトーマス・R・パーキンによって n = 5 の場合の反例として解 (27, 84, 110, 133, 144) が発見され、27^5 + 84^5 + 110^5 + 133^5 = 144^5 が成り立つことが確認されました。この時点で、オイラー予想は間違いであることが示されました。
この発見から n = 4 の場合も反例がある可能性があるとして研究が続けられ、1986年にハーバード大学のノーム・エルキーズが、楕円曲線論とコンピュータを用いて発見しました。その反例は 2682440^4 + 15365639^4 + 18796760^4 = 20615673^4 という、とんでもなく大きな自然数の組み合わせでした。この発見と同時に、このような解は無限に存在することも確認され、約200年間未解決となっていたオイラー予想は、完全に否定されました。
人間誰しも間違うことはあります。正当化するわけではありませんが、底辺研究者の私が間違っても、当然のことです。大数学者のオイラーだって間違うんですから・・・。