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ハゲタカジャーナルについて

学術論文の世界でも、デジタル化は急速に進んでいます。昔は、論文と言えば”紙の雑誌(ジャーナル)”に掲載されるのが当たり前でした。しかし現在、多くの場合、論文は電子化されてpdfファイルとしてネット上で公表されています。日本の学会も、デジタル化の進行に伴って、紙媒体での出版は数が少なくなっています。

これまでは、科学研究の成果発表は印刷出版を主体とした学術雑誌によって行われていました。そのため、1990年代ごろから大手出版社による学術雑誌市場の寡占と価格高騰が続いていました。現在でも、電子ジャーナルの価格の高騰は大学予算を圧迫する要因の一つとなっています。このような従来型の”非オープンアクセス”ジャーナルは、購読やサイトライセンス、ペーパービューのサブスクリプションを通じて、出版に掛かる費用を回収しています。

これに対抗し、学問の自由な共有を目指す動きが現れました。それがオープンアクセス(open access;OA)という考え方です。オープンアクセスとは、学術論文などの研究成果をインターネットを通じて、誰もが無料で閲覧可能な状態に置くことを指します。オープンアクセスジャーナルは、読者がジャーナルコンテンツを読むためにお金を支払う必要のない資金調達モデルを持つことが特徴です。

オープンアクセスジャーナルでは、読者はお金を払わずに閲覧が可能です。しかし、ジャーナルの維持には当然お金がかかります。では誰がお金を払っているのでしょうか?。それは学術論文を投稿する研究者(著者)です。ジャーナルにもよるのでしょうが、最近投稿した論文の投稿料は20万円前後でした。このような投稿料も、日本の少ない研究費を圧迫しています。

研究者の研究成果は、多くの場合、論文の数で評価されますから、上のポジションを目指す研究者としては、数多くの学術論文を書くことが求められます。そこに目を付けたのが、日本では”ハゲタカジャーナル”というイカガワシイ名前で呼ばれる粗悪なジャーナルです。ハゲタカジャーナルは、論文の著者から高額の論文掲載料を得ることだけを目的として発行され、査読付きであることを標榜しながら実際には適切な査読を経ていない低品質の論文を掲載するオープンアクセス形式の学術誌(ジャーナル)を指します。

研究者にとっては、まともな査読を通らないような論文でも掲載料を支払うだけで発表できるため、ハゲタカジャーナルは論文発表件数を水増しする目的で使われてきました。しかし現在は、当然ですがハゲタカジャーナルへの投稿は推奨されていません。ハゲタカジャーナルに論文を掲載すると、研究者としての信用、評価を低下させてしまう危険があります。

最近受理された論文の投稿料は、日本円で30万円を超えていました。インパクトファクターが3点台の”ハゲタカジャーナルではない”学術誌でしたが、高額の投稿料を理由に、投稿を取りやめました。アカデミックな世界でも、経済と無関係ではありません。世知辛い世の中になってきました。

これらの問題を解決する良い方法は無い物でしょうか?。そのような”画期的な学術論文”が出てくることを、秘かに期待しています。

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