見出し画像

アンサング偉人伝#3 孤高の天才・ヘヴィサイド

 オリヴァー・ヘヴィサイド(Oliver Heaviside)は、1850年にロンドンで生まれたイギリスの電気技師です。ヘヴィサイドはその業績から、現在では物理学者・数学者と紹介されることがありますが、正規の大学教育を受けず、研究機関にも所属せず、独学で研究を行なった孤高の天才です。ニュートンやエジソンなどの超有名な偉人に比べると、一般的には知っている人は多くないと思います。

 ただし、理系の大学で学んだ人なら、電気回路における複素インピーダンスや微分方程式を解く際のヘヴィサイドの演算子法などに、理解できたかどうかは別として触れたことがあるはずです。また、インダクタンスコンダクタンスなどの回路理論用語を提唱したのもヘヴィサイドですし、同軸ケーブルと呼ばれるケーブルを発明したのもヘヴィサイドです。

画像2

 ヘヴィサイドは、電気に関する功績は数え切れないほどあり、しかもどれも非常に重要なものですが、数学・物理に関する主な発明は、ヘヴィサイドの演算子法、ヘヴィサイドの展開定理、ヘヴィサイドの階段関数(タイトル図)、マクスウェル方程式(現在のように簡潔に表現した業績)、などがあげられます。

 ヘヴィサイドの演算子法は、彼が30歳頃に発明したものですが、彼は一介の技術畑出身であったため、数学者たちから、その理論は数学的には厳密性に欠けたものだと批判されました。そのため、この発明はなかなか評価されませんでした。ヘヴィサイドは当時演算子法について、数学者たちと大激論になった際、一歩もたじろぐことなく彼らに立ち向かいました。

“Why should I refuse a good dinner simply because I don’t understand the digestive processes involved?” (消化のプロセスを知らないからといって、私は素敵なごちそうを拒絶しなければならないのか? = 便利に微分方程式が解ける方法があるのに、なぜ使わないんだ?)と反論します。ヘヴィサイドは、理論の厳密さにこだわりすぎるあまりに、科学技術の発展の妨げになることはナンセンスだと主張したかったようです。

 生前のヘヴィサイドは、多くの人から称賛されることはありませんでした。まさにアンサングな偉人です。ヘヴィサイドの功績のほとんどは、死後に認められたものばかりです。ヘヴィサイドの数学的な発明は、いずれも大変便利で実用性の高いものでしたが、厳密性に欠けると数学者たちからは激しい攻撃に遭いました。しかし後日、そのほとんどが正しいものであると認められたのでした。

 へヴィサイドの記事を検索していたら、ヘヴィサイドと名付けられた小型の垂直離着陸機(VTOL) が開発されているという面白いページを発見しました。軍用の飛行機にはハリアーオスプレイのような垂直離着陸機はありますが、民生用の小型機は初めて知りました。飛行機のヘヴィサイドは、写真のようにたくさんのプロペラが付いた独特の形をしています。たぶん、これを開発している会社は、孤高の天才・ヘヴィサイドのブレない研究姿勢をリスペクトし、自分たちに重ね合わせているのだろうと思いました。たぶん、ヘヴィサイドも天国から応援している気がします。

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?