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重力計のキモ ゼロ長のバネ

 バネには様々な種類がありますが、一般的に思い浮かべるのはコイルばねだと思います。コイルばねとは、その名の通りぐるぐると巻かれた見た目のばねです。コイルばねには、圧縮して使う圧縮コイルばねや、引っ張って使う引張コイルばねがありますが、どちらも伸縮の長さに応じた(比例した)力が利用されます。

 重力を測定する相対重力計にもバネが使われていますが、ちょっと特殊なバネが使われます。”ゼロ長のバネ”という言葉を聞いたことがありますか。バネには自然長と言って元々のバネの長さがあり、自然長からの伸縮量が、そのバネにかかる力に比例します。しかし、この自然長が用途によっては邪魔になる場合があります。この自然長を”実質的にゼロ”にしたのが、ゼロ長のバネ(zero-length spring)です。このタイプのバネは、地震計や重力計の内部で使われています。

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 上右図は自然長がある場合の、バネの長さと張力の関係を表わしています。自然長があると、ある固定した長さから始まるので、バネ長と張力のグラフは原点を通りません。しかし、ゼロ長のバネには、グラフが原点を通るように、あらかじめ初期張力が加えられています。そのため、バネ長と張力が比例します。この比例する長さを利用して、相対重力計が作られています。

 このゼロ長のバネのアイディアは、アメリカのラコスト (LaCoste) によって考案されました。そのきっかけは、大学の授業でロンバーグ (Ronburg) 先生が出した課題レポート(宿題)だったそうです。この素晴らしいアイディアは、重力計に採用され、LaCoste-Ronburg重力計として結実しました。LaCoste-Ronburg重力計は、アナログ重力計の中で最も高精度な重力計として、長い間、重力探査に使われてきました。

 そんな特殊なバネは関係ないと思われるかもしれませんが、ゼロ長のバネは実は身近なところに使われています。アームスタンドは、LEDライトやスマートフォンを取り付けて使いますが、この自由な位置で固定できる機構2つのゼロ長のバネが使われています。どうして固定できるのかは、自分で考えてみてください。私からの宿題です^^。

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