マガジンのカバー画像

ぶったん四方山話

52
これまでに経験した物理探査にまつわるエピソードを紹介します。
運営しているクリエイター

2022年7月の記事一覧

ぶったん四方山話#12 野外調査、始めました~(^^♪

あまりに暑いので、「冷やし中華、始めました~♪」みたいなノリの出だしですみません。昨日(7/25)から、試作機による本格的な”MT法探査”を始めました。場所は、糸島半島の西端と、伊都キャンパス内です。 MT法を知らない人のために、簡単に説明します。この方法は、日本語では地磁気地電流法といって、自然の地磁気変動によって誘導された地電流を観測して地下の比抵抗分布を調べる電磁探査法です。自然の電磁場の周波数は、数十Hzから1/1000Hz程度まで様々な種類がありますが、低周波の電

世界”物探”遺産の旅#9 ハワイ・マウナケア火山

マウナ・ケア(Mauna Kea)は、ハワイ諸島にある火山で、ハワイ島を形成する5つの火山のうちの1つです。ハワイ語でマウナは「山」、ケアは「白い」という意味なので、マウナケアは”白い山”もしくは”雪の山”を表わします。この山は、ハワイにあるにも拘わらず、冬になると山頂が雪に覆われることがあります。この火山は、比較的粘性の低い溶岩から出来たため、タイトル画のように、平たい形になっています。 マウナ・ケア山頂付近は天候が安定し、空気が澄んでいることもあり、世界11ヶ国の研究機

世界”物探”遺産の旅#8 マーシャル諸島・ジャルート環礁

マーシャル諸島共和国(通称マーシャル諸島) は、太平洋上に浮かぶ島国で、いわゆるミニ国家の一つです。この島国は、ミクロネシア連邦の東、キリバスの北に位置していて、”真珠の首飾り”とも呼ばれるマーシャル諸島全域を領土としています。現在は独立国家ですが、一時期は日本が統治していました。Wiki情報では、以下のような歴史年表になっています。 1914年 - 第一次世界大戦において日本が占領。 1919年 - 国際連盟からの委任で日本の委任統治領(外地)となる。 1920年 - 国

世界”物探”遺産の旅#7 サルイエール

サルイエール(Sariyer)は、トルコのイスタンブールの最北端、ヨーロッパ側に位置する地区である。この地区のボスポラス海峡に面した村々は、かつては漁村でしたが、この街の富裕層の保養地となりました。オスマントルコ時代には、スルタンがピクニックや遠足でこれらの村々を訪れました。18世紀から19世紀にかけて、海岸には裕福な外国人商人たちの夏の別荘が立ち並んでいた。この時代には、多くの外国大使館が夏の離宮を建設しました。海岸道路が建設されて以来、これらの村々やその背後の丘陵地帯には

世界”物探”遺産の旅#6 グァラパリ

ブラジルのグァラパリは、有名な観光地の一つで、美しい曲線を描く白い砂浜で知られています。ここでは、海岸線に面した土地は隙間なく開発されていて、高層建築が建ち並んでいます。市内にはセチバ自然保護区が設定されていて、カメや鳥などの原始的な沿岸生態系の保護が行なわれています。 実はグァラパリは、世界でも有数の自然放射線量の高い地域としても知られています。グァラパリの周辺地域には、放射性物質を含むモナザイト(モナズ石)が多く埋蔵されており、このモナザイトが砂として海岸に堆積したため

世界”物探”遺産の旅#5 ポツダム

旧・東ドイツの都市ポツダムは、ポツダム宣言で有名な歴史的な町で、私が世界”物探”遺産に登録しなくても、本当の世界遺産に登録されています。ポツダム宣言は、1945年(昭和20年)7月26日にイギリス・ アメリカ・中華民国の名において日本に対して発された全13か条から成る、日本への降伏要求の最終宣言です。日本は1945年8月14日にこの宣言を受諾しました。その後、9月2日に日本が降伏文書に調印し、即時発効して第二次世界大戦・太平洋戦争は正式に終結しました。 タイトル画は、ポツダ

ぶったん四方山話#11 電気探査の伝統

伝統とは、ある民族・社会・集団の中で、思想・風俗・習慣・様式・技術・しきたりなど、規範的なものとして古くから受け継がれてきた事柄のことを言います。また、それらを受け継ぎ、伝えることを意味します。伝統を受け継ぎ、長く後世に伝えることは難しいことです。能や狂言、歌舞伎などは発祥当時は最先端の流行芸能でしたが、その技が数百年も受け継がれたことで伝統芸能になりました。 日本の物理探査学の伝統は、ひとりの研究者から始まりました。九州帝國大学工科大学の小田二三男助教授(当時)は、実家が

世界”物探”遺産の旅#4 チチュルブ隕石孔

チチュルブクレーターは、メキシコのユカタン半島にある巨大クレーターです。このクレータは、白亜紀末の6550万年前に、直径10~15キロメートルの小惑星が秒速20キロメートルで衝突した跡と考えられています。地名であるChicxulubは、現地での発音は”チチュルブ”に近いそうですが、その綴りから”チクシュルーブ”とも呼ばれます。 このクレーターの原因となったい隕石の衝突によって、マグニチュード11以上の大地震が起こり、高さ300mもの大津波が周辺に押し寄せ、大気中に舞い上がっ