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ぶったん箸休め

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物理探査のことを略して、物探(ぶったん)と呼びます。ここでは、物探とチョッとだけ関係ある話題を集めました。智の箸休めです。楽しんで下さい。
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2024年2月の記事一覧

高感度にもほどがある#2 重力計

重力探査は、地下の岩石や土壌の不均質性から生じる密度変化を捉えることで地下構造を推定する方法です。おもに石油鉱床や地熱貯留層などを探すときの概査などに使われます。 重力探査では微小な重力の差を測定する必要があるので、高精度な重力計が必要です。ここまで説明なしに”重力を測定する”と書きましたが、厳密には重力加速度を測定します。高校の物理では、重力加速度は一定の9.8m/s^2と教わりますが、実際はそうではありません。地球は自転しているので、物体には引力と遠心力が働きます。この

高感度にもほどがある#1 超電導磁力計

現在進めているMT法探査の機器開発の重要部品に、磁気センサがあります。我々が使っているのはMI素子と呼ばれるセンサで、低周波領域の感度が一定というMT法には持って来いの性質を持っています。このセンサでは、地球磁場の数万分の一の微小な磁場変化を測定することができます。MIセンサではnT(ナノテスラ)レベルの磁場変動をとらえる必要があります。 磁場測定の感度だけで言えば、MIセンサよりも凄いセンサがあります。それが超電導磁力計です。超電導磁力計はnTの1000分の1であるpT(

遺跡探査の研究者は絶滅危惧種

動植物が絶滅しそうになれば、レッドリストに登録され、保護の対象になりますが、これが同じ生物でも人間の研究者となれば、保護の対象にはなりません。 ハイテク機器を使った遺跡探査は最先端の研究分野ですが、日本には研究する人がほとんどいません。私も数少ない遺跡探査の研究者ですが、遺跡探査はメインの研究分野ではないので、地方自治体の教育委員会などの依頼を受けた際にだけ”副業的に”遺跡探査を引き受けています。 現在、遺跡探査の研究者は日本にいるトキの数より少ないと思います。日本のトキ

分野が違うと専門用語が違う

以前にも同じような記事を書きましたが、専門分野が違うと同じ意味のことでも、異なる名称で呼ばれることが結構あります。例えば、物理探査の専門用語に比抵抗というのがありますが、これは高校の物理の教科書では抵抗率と書かれています。また、昔の教科書などには固有抵抗と書かれていたりします。また、物理探査では比抵抗の逆数となる物理量を導電率と呼びますが、その他の分野では電気伝導度と呼ばれたりします。 物理探査では、飛行機やヘリコプタなどを使った空中からの磁気探査や重力探査などがありますが

伝達関数について

伝達関数とは、「システムの入力と出力の関係を表し、入力を出力に変換する関数」のことで、制御工学でよく出てくる専門用語です。タイトル画のように、ある回路に時系列信号を入力すると、それに応じた時系列の出力信号が得られます。このブラックボックスの関数のことを伝達関数と言います。 伝達関数には、入出力の関係が簡潔に書けるので、ラプラス領域での数式がよく使われます。ラプラス領域は、複素周波数(s)を使って記述できます。タイトル画の伝達関数を使うなら、出力は” C(s)=G(s)R(s