マガジンのカバー画像

ぶったん箸休め

126
物理探査のことを略して、物探(ぶったん)と呼びます。ここでは、物探とチョッとだけ関係ある話題を集めました。智の箸休めです。楽しんで下さい。
運営しているクリエイター

2023年10月の記事一覧

MIセンサを紹介します

現在、精力的に取り組んでいるMT法の新しい探査装置のキモになるのは、小型の磁場センサです。従来のMT探査装置では、およそ10kgもある重いインダクションコイルを3本も使う必要があります。このコイルを担いで山道を行くのですから、MT法のフィールド調査は体力勝負です。 しかし、我々の新しい探査装置では磁場測定に、重さ数10gの超小型磁場センサを使います。このセンサが、MIセンサ↑↑と呼ばれる新しい磁場センサです。MIセンサは、MI効果(磁気インピーダンス効果)を利用した、日本独

物理探査のモニタリング考

テレビ番組の名前にも使われている”モニタリング”とは、監視、観察、観測のことを意味し、対象の状態を継続または定期的に観察・記録することを指します。 物理探査は、鉱物資源やエネルギー資源などの”動かない/移動しない”ものを対象にしてきました。しかし、ここ最近、”移動する資源”に対する探査の要求が高まっています。例えば、地熱資源は地下から蒸気や熱水を取り出しますが、取り出した蒸気や熱水の量が変わると、地下の状態が変化します。 継続または定期的な観測を長期間実施していれば、通常

群盲象を評す 地熱探査の難しさ

『群盲象を評す』は、数人の盲人が象の一部だけを触って感想を語り合う、というインド発祥の寓話で世界に広く広まっています。この寓話は、長い年月を経てその意味は国あるいは地域ごとで異なっていますが、おおむね”真実の多面性や誤謬に対する教訓”となっています。同じ意味を持つ諺ですが、”盲人が象を語る”、”群盲象をなでる(群盲撫象)”などとも呼ばれています。この諺のもとになる話は以下の通りです。 『群盲象を評す』の意味としては、断片的な情報で全てを理解したと間違った考えを持ってしまう、

フィールド調査・大霧地熱発電所#3

2005年に国分市・溝辺町・横川町・牧園町・霧島町・隼人町・福山町の1市6町が広域合併して、人口13万人規模の『霧島市』が誕生しました。 フィールド調査の現場は霧島市牧園町ですが、宿泊したのは霧島市国分です。私が泊ったビジネスホテルの窓からは、噴煙を上げる桜島が見えました。私たちが国分に到着したその日の夕方(2023年10月19日 16:48)、桜島が爆発的噴火を起こしました。噴煙は3,600mの高さになったそうです。私が見た噴煙は、この噴火の噴煙でした。桜島の噴火のことは

フィールド調査・大霧地熱発電所#2

昨日は午後2時過ぎくらいに、大霧地熱発電所に到着しました。大霧地熱発電所には、地熱発電の概要を説明した展示館がありますが、その二階が日鉄鉱業さんの現場事務所になっています。 到着の時間を3時頃と伝えていたので、少し早く着きすぎましたが、少しして担当者の方が現場事務所に戻ってきて、”保安に関する現場講習”をしてくれました。地熱発電所構内で作業(MT法の探査など)するには、この現場講習が欠かせません。地熱発電所構内には、守るべきルールが厳しく定められています。 例えば構内では

フィールド調査・大霧地熱発電所#1

普段のブログはその日の夜に書くのですが、今日は珍しく、朝に書いています。今日は、これから鹿児島に出張です。鹿児島にはいくつか地熱発電所があって、そのひとつである大霧地熱発電所に行ってきます。大霧発電所は事業用として九州では、大岳発電所、八丁原発電所、山川発電所についで4番目、全国では10番目(自家用を含めると17番目)の地熱発電所です。 大霧発電所がある牧園町と栗野町は、鹿児島県の北部にあり、宮崎県との県境に接しています。8月に実施した宮崎県えびの町は、山を挟んで反対側の位