煉獄召喚
三、煉獄
まだ秋の始まりだと言うのに妙に肌寒い薄曇りの朝であった。
茜は緊張の面持ちで十兵衛の屋敷に向かった。十兵衛は妻子とは別居しているために煮炊きをする下女一人、下僕一人との質素な暮らしぶりであった。
柳生家は大名として将軍家指南役の栄華を誇ったのだが、父の宗矩が死亡した折に兄弟で遺領が分地され、旗本に戻った。
十兵衛は、
「大名などと言うはわしには堅っ苦しくて向かぬわ。なんならわしの分の遺領も宗冬に与えてもらえれば柳生家も安泰であったものを・・・」
と残念がった。
最近の十兵衛は渡り歩いていた道場にも姿を現しておらぬようだ。
茜もそのことを知らぬではなかったが、体調がすぐれぬのならゆっくり休んでもらった方が良いと思いむしろ喜んでいたのだ。
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追悼:親愛なる千葉真一様。
映画『魔界転生』の世界からスピンアウトした異色剣豪小説です。
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