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なぜうつ病になるのか?

~うつ病とは ~

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うつ病は、気分が強く落ち込み憂うつになる、やる気が出ないなどの精神的な症状のほか、眠れない、疲れやすい、体がだるいといった身体的な症状が現れることのある病気で、気分障害の一つです。
気分障害は大きく「うつ病性障害」と「双極性障害(躁うつ病)」に分けられ、いわゆる「うつ病」はうつ病性障害のなかの「大うつ病性障害」のことです。うつ病では気分が落ち込んだり、やる気がなくなったり、眠れなくなったりといったうつ状態だけがみられるため「単極性うつ病」とも呼ばれますが、一方の双極性障害はうつ状態と躁状態(軽躁状態)を繰り返す病気です。

発症のきっかけはさまざま

その人自身の物事に対する考え方や生活環境、日常生活において発生したストレスなどが複雑にからみあって引き起こされると考えられています。遺伝との関連も研究されていますが、特定の遺伝子があれば必ず発症するというものでもありません。
なかには、うれしい、明るい出来事がきっかけとなって、うつ病を発症することもあるのです。

~うつ病になりやすいタイプ~

うつ病になりやすいタイプとして、まじめで責任感が強く、人あたりもよく、周囲の評価も高い人が多いということがいわれています。

このようなタイプの人は自分の許容量を超えてがんばりすぎたり、ストレスをため込んでしまうため、こころのバランスを崩してしまいやすいようです。
すべてに完璧を求めるのではなく、物事に優先順位をつけてやっていくようにするなど、考え方を変えていくこともうつ病になりにくくするためには重要です。

しかし自分の性格を変えるのはとても大変なことです。医師に相談し、治療を受けることのメリットの1つには、このような考え方に対する指導やアドバイスを受けられることにもあるのです。

循環気質

元気な躁状態と抑うつ状態を繰り返す双極性うつ病になりやすいタイプで、社交的、善良、親切で親しみやすい反面、激しやすいという面をもっています。

執着気質

義務感が強く、仕事熱心、完璧主義、几帳面、正直、凝り性などの特徴があります。仕事の質は高いのですが、量がこなせません。仕事を一生懸命完成さるために軽い興奮状態が続いたあと、ガクッときて、抑うつ状態に陥りやすいタイプです。また二者択一的で白か黒か、ゼロか100かという結果を決めつけたがり、優先順位をつけられないタイプでもあります。

メランコリー親和型気質

常識を重んじ、常に他人に配慮を忘れず、円満な関係を保とうとし、自己の性格だけでなく、他との関係も重視するタイプです。そのため他人の評価が大変気になり、いったん何か問題が起きると、悲観的になって、すべて自分の責任だと考えるタイプでもあります。

~うつ病が発症する要因~

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脳の中では、情報を伝達するためにさまざまな神経伝達物質が働いており、そのうちセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンは、モノアミンと総称されています。一説に、うつ病は、このモノアミンが減ることで引き起こされるとされています。
しかし、これだけでうつ病が発症するしくみをすべて説明できるわけではなく、ほかにもいくつかの説があります。

~うつ病の診断基準 ~

現在、うつ病の診断基準にはアメリカ精神医学会による「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル*1」と世界保健機関(WHO)による「疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版」(ICD-10)の2つが用いられています。ここではDSM-5の診断基準についてみてみます。

DSM-5によれば、うつ病は「抑うつ障害群」という病気の一つに分類されており、「大うつ病性障害」とも呼ばれます。下記の9つの症状のうち1または2を含む5つ以上の症状があり、それが2週間以上続いている場合に「うつ病」と診断されることになります。

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~うつ病の症状~

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こころの症状

こころの症状でよくあるものは、「抑うつ気分」と「意欲の低下」です。

抑うつ気分

・気分が落ち込む、特に朝の抑うつ気分が強い
・悲しい気持ちになる
・憂うつだ
・何の希望もない

思考力の低下

・集中力が低下し、仕事の能率が落ちた
・些細な決断ができない
・注意力が散漫になって、人のいうことがすぐに理解できない

意欲の低下

・今まで好きだったことや趣味をやる気になれない
・友人や家族と話すのも面倒だし、話していてもつまらない
・テレビや新聞をみてもおもしろくない
・身だしなみやおしゃれに関心がわかない
・不安や落ち着きのなさ(焦燥感)でじっとしていられない
・毎日生活に張りが感じられない


からだの症状

うつ病のからだの症状は、1つではなくいろいろな症状があらわれます。眠れないことに加えて、頭痛がする、食欲が出ないなどです。そしてこのような症状があるにもかかわらず、いろいろな検査をしても原因がわからないということがよくあります。
からだの不調に加えて、よく考えてみると「毎日が楽しくない」、「何をしてもつまらない」、「とにかく憂うつだ」など、こころの症状もある場合は、早めに医師に相談することが大切です。

睡眠の異常

・眠れない(入眠困難)
・朝、目覚ましよりも早く目が覚める(早朝覚醒)
・夜中に何度も目を覚ます(中途覚醒)
・寝た気がしない(熟眠障害)

食欲の低下
(ときに増加)

・食欲がない
・何を食べてもおいしくないし、食べるのも億劫
・ダイエットをしていないのに、体重が1か月で数キロも減った
・甘い物が欲しくなり、過食になり体重が増加することもある
(食欲や体重は増加する場合もあります)

疲労、倦怠感

・からだがだるい
・疲れがずっと残っている
・ひどく疲れる
・からだが重い

ホルモン系の異常

・月経の不順
・勃起の障害
・性欲の低下

その他の症状

・頭痛(頭に鍋をかぶったようなすっきりしない鈍い痛み)、頭重感
・肩、背中、四肢関節などさまざまな部位が痛む
・便秘
・心臓がドキドキする(動悸がする)
・胃の痛み
・発汗
・息苦しさ、窒息感

~うつ病の治療 ~

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うつ病治療の四本柱

うつ病は脳の病気ですから治療しないと悪化して治りにくくなったり、その後の社会生活に大きな悪影響を与えてしまったりしますので、なるべく早く治療を開始することが大切です。
うつ病治療の四本柱は「休養」「環境調整」「薬物治療」「精神療法」です。

休養・環境調整

十分な休養をとって心と体を休ませることはうつ病治療の第一歩です。職場や学校、家庭などで受けるストレスを軽減できるように環境調整をしてみましょう。たとえば、職場での配置転換や残業時間を短縮してもらったり、家事を分担して手伝ってもらったりするとよいでしょう。

うつ病になる方の性格的な傾向として、生真面目で責任感があり自分に厳しい方が多いので、休養をとったり、環境調整をお願いしたりすることで職場や家族に迷惑をかけてしまうのではないかと考えてしまうかもしれませんが、焦らずに休養をとって、自分のできることを無理なくできる環境を作ることが回復への早道となります。主治医に相談の上、職場の上司や同僚、担任の先生、家族にお願いしてみましょう。

また、うつ病の症状としてなかなか寝付けない、あるいは早朝に目が覚めてしまうといった「睡眠障害」や「食欲不振」を訴える方が多くみられます。規則正しい十分な睡眠とバランスのとれた食事は、健康な心と体を取り戻すためには欠かせませんから、そのような症状がある場合には医師に相談してみましょう。

薬物治療

うつ病の治療には休養や環境調整とあわせて薬による治療が欠かせません。現在、日本で用いられているおもなうつ病治療薬はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)と呼ばれる「抗うつ薬」です。そのほかにも患者さんの症状に合わせて「抗不安薬」「睡眠導入薬」「気分安定薬」「非定型抗精神病薬」などが使用されます。

薬物治療

人によって効果に違いはありますが、うつ病の治療薬は飲んですぐに効果が現れるものではなく、焦らずに服薬を継続する必要があります。また、勝手に薬の量を増やしたり減らしたり中断したりすると、副作用が起きる可能性がありますので、かならず主治医の指示に従って服薬するようにしましょう。詳しくは「お薬について」をご覧ください。

精神療法

十分な休養・環境調整と薬物治療を組み合わせることでうつ病はかなり回復するといわれていますが、うつ病の原因となったストレスを振り返って対処法を学んで調子の良い状態を維持し、再発を防ぐ目的で行われるのが精神療法です。もっとも一般的なものに「認知行動療法」と「対人関係療法」があります。

うつ病になりやすいといわれている生真面目で責任感のある性格は、常識的で社会性があり本来好ましいものですが、いいかえれば、仕事などで手を抜くことができず完璧を求めてしまったり、過度に自分を責めてしまったりするためにストレスを感じやすい性格ということができます。

認知行動療法

なにか困った事にぶつかった時に起こりがちな悲観的な物事の捉え方や考え方のくせを改善することで、マイナス思考がうつ状態を悪化させる悪循環を断ち切る方法を学びます。

対人関係療法

うつ病を引き起こす要因となった対人関係の問題を解消することで、ストレスを軽減させる目的で行われます。
対人関係が改善されると周囲の人にも受け入れられやすくなるので、回復に向けたサポートが受けやすくなるというメリットもあります。

これらの精神療法は薬物治療とあわせて行うことで効果を発揮します。精神療法の実施にあたっては、それぞれの患者さんに応じて実施時期や内容が異なりますから、医師の指示に従いましょう。

その他の治療

うつ病の治療には上記のほかにも下記のようなさまざまな治療法があります。

運動療法

心臓に負担にならない程度の有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど)を行う治療法で、薬物治療と組み合わせて行います。

高照度光療法

非常に明るい光(2500ルクス以上)を1日1〜2時間程度照射する治療法です。

修正型電気けいれん療法(m-ECT)

全身麻酔と筋肉けいれんを抑える薬を使用して、脳に数秒間の電気刺激を与える治療法です。重篤な場合や深刻な焦燥感、強い希死念慮(死にたいと思う気持ち)がある場合、副作用などの理由で薬物治療が難しい場合などに用いられます。

経頭蓋磁気刺激法(TMS)

特殊な機械で磁場を発生させ、そこで生じた誘導電流で神経細胞を刺激する方法です。

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