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丁寧に立つ



60歳以上対象のヨガ教室を担当しています。そこでは立ち方の練習も取り入れています。皆さん先のことを心配して「ずっと自分の足で歩きたい」と望んでおられるからです。
歩くためにはしっかり立たなければなりません。
両足で立てる➡片足を上げる➡上げた足を着く➡一歩、となります。立つことが不安定で片足立ちができないと、ずっと足が着いた状態(擦り足)での歩行になります。
ということは、自由自在に歩くためには片足で立てる時間が長い方が有利です。片足で1秒立てる人と片足で10秒立てる人を比べれば、10秒の方が出す足をどこにでも置けるからです。大股小股、速いゆっくり、高い低い。自分の動かしたいように足を出せるのです。

立ち方練習、初回の日でした。
「皆さん、1歳ごろから今日までずっと立ってきましたね。60、70、80年以上立ってます。もうベテランの域です! では今から3つ、形が違う立ち方をやってみてください」とお願いしました。皆さん「???」戸惑っておられます。そんなこと考えてなかった、という顔です。
「では今の立ち方、それを1つとしましょう。もう1つは・・・。結婚式の記念写真を想像してみしょうか」するとほとんどの方が、足をそろえ身体を斜めにし両手をお腹の前に重ねて、立ち方を変えてくれました。「では和服の時をイメージしましょうか。少し内股かげんで」全員スッと和服の雰囲気を作ってくださいました。
「皆さん、1つ目の立ち方より後の2つのほうが決まってますねぇ」と言うと、笑い声が聞こえます。「せっかく素敵な立ち方ができるのに、普段もそうした方がお得だと思いませんか?」おススメすると、多くの方は、理屈は分かるが気乗りしない、というご様子でした。

このことを服にたとえると、普段着とよそゆきの服になりましょうか。
普段着の立ち方とよそゆきの立ち方を使い分けているのです。
当然、よそゆきの立ち方のほうが美しいのですが、普段と違うからか違和感や恥ずかしさを感じるようです。
さあ、おススメしたことを何人が実行してくれるかな・・・

地球のおばちゃんは20年近く立ち方にこだわってきました。きっかけは立つ瞑想を学んだこと。壁に向かってずっと立つ。そういう瞑想でした。立つことをしっかり観察するといろんな気づきがある。それを知ることができたのです。
何ごともそうですが、丁寧に行うと上手になるものです。私自身立つことを意識するようになってから、バランス感覚が身に付いたし靴底の減り方が改善しました。

さらに「地球で人間に生まれてきたのだから立つことを味わいたいし楽しみたい」と思うようにもなり、こんなことも想像しました。
『宇宙人が地球の人間を観たときに、「あのおばちゃんの立ち方いいねえ~」と一目置かれたい。人が見てなくても、ノラネコや虫や木や花たちが見てるかも知れない』

時間の余裕がある時には丁寧に立ってみます。
裸足になって、踵の骨にしっかり乗っているか、五本の指が着いているか、土踏まずが上がっているか、足の裏の感覚を感じて、その上に足首やすね、膝、太ももと、つながっている。
地球の中心から大地へ、そして自分の足の裏が続いている。そこから宇宙につながる頭のてっぺん。立ってるだけで壮大な気分になれます。

気持ちいい~。
人間に生まれて62歳まで立つことができています。
ありがたいことです。




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