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メコンの光、サイゴンの夜
2023/2/28ベトナム北上ひとり旅3日目
(いずれも現地時間)
静かな朝
昼間から深夜にかけて賑わうホテルの前の路地も早朝は静かだった。
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円を両替しようと角の両替所に行ったのだが閉まっていた。
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レンタルバイク屋さんの前をうろちょろしていた2匹の犬は野良犬ではなく、同じ路地の並びの他のホテルの飼い犬だった。
7:45にAN TRAVELのオフィス前からバスで出発する予定なので、部屋で昨日買った卵サンドとヨーグルトを食べてオフィスへと向かった。
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7:30頃にオフィスへ行くとまだバスの姿は見当たらず、デスクのお姉さんに8:00頃にバスが来るから待っていてくれと言われた。オフィス内の椅子に座り待たせてもらっていると、バインミーを頬張る若いドイツ人女性が入ってきて先隣の椅子に座った。
街ゆく人々やファングーラオ通りを行き交う車の流れを眺めていると、バスのある広告が目に留まった。
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今回の旅の目的の一つに寝台列車に乗って移動するということがある。日本ではサンライズ出雲などがあるが、生活の足として利用される寝台列車は残っていない。しかしベトナムにはホーチミンからハノイまで南北を結ぶベトナム統一鉄道があり、今なお現地の人々に日常生活の移動手段として利用されているのだ。このベトナム統一鉄道のチケット予約で12Goを利用したのである。
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というのも訳があって、ベトナム統一鉄道のホームページでチケットの予約はできるのだが日本で発行されたクレジットカードが利用できない。現地の窓口でチケットを取ることも考えたが、普通車のチケットは取れても寝台車は人気のようで直前には取れないという情報を得ていた。そこで更に調べたところ12Goというサイトがアジア全域の交通手段の予約を網羅していることを知り、手数料がかかるがクレジットカードが利用できるため日本出発の2週間前に予約してチケットを取ったのである。
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そうこうしているうちにバスが到着し、僕はバスに乗った。バスには既に何人も人が乗っており、ホーチミン市内のAN TRAVELのオフィスを回って乗客をピックアップしてきたようだった。
Vinh Trang Temple
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僕が乗ってからさらに2ヶ所ほどでツアー参加者をピックアップし、参加者全員が揃ったところでツアーガイドさんからツアーの説明があった。ツアーガイドはニャンさんといい、Mr.Good Guyと呼んでくださいと面白おかしく自己紹介をしてくれた。
バスはサイゴン川沿いを進んで行く。
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ホーチミンの市街地を抜けると、バスは国道一号線に入り南下し始めた。
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これが「一号線」、沢木がオープン・ツアーでホーチミンからハノイまでバスで移動した国道一号線か!と思うと胸がワクワクするような感じがした。
前回、メコンデルタへのツアーに参加した折、ヴェトナムの旅行会社にはオープン・ツアーというシステムのバスがあることを知った。
それは一般の路線バスとは別の、外国人観光客のためのバスだった。ヴェトナムの旅行会社たる「カフェ」では、大都市間に毎日バスを走らせている。だから、たとえば、ホーチミンからハノイまでのチケットを買えば、ニャチャンとかフエといった大きな都市で自由に降りられるのだ。そして、好きなだけ滞在してから、また次の目的地に向かって行くことができる。要するに、一方向なら乗り降り自由のパスと考えればいい。ただし、その経由地は主催するカフェ、つまり旅行会社によって微妙に違っている。
国道の両側には熱帯特有の木々が生い茂り、遠くまで水田が広がっている。
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1時間半程バスに揺られたところで、最初の目的地であるミトーのVinh Trang Temple(永長寺)に到着した。バスを降りてツアー参加者が集まるとニャンさんが解説をしてくれた。
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この仏教寺院は中国の影響を非常に強く受けていて、輪廻転生が…という話だったのだが、強烈な日差しと40℃近い気温で全く頭に入ってこなかったのである。
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15分間の自由時間があり僕は寺院の中を歩いた。
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寺院の奥に進むと、とても大きな涅槃像があった。
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あまりに日差しが強いので涅槃像の横の塔に入ると、そこには東西南北に4体の仏像があった。
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寺院内はとても綺麗に整備されていて、袈裟を着た子供のお坊さんが掃除をしている。
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寺の本堂には中庭があり、多くの参拝者がいた。
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腕時計の針を見て、急ぎ足で寺院を見て回りながら冷房が効いているバスへと戻った。
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MY THO MARINA
バスの窓から見る、メコンデルタツアーの拠点であるミトーの街並みは照りつける太陽と埃っぽい道沿いに並ぶうらびれた建物との対比で、何処か寂しさを感じた。寺院から10分ほど走るとMY THO MARINAに着いた。
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先着のツアー団体がいたため、5分程トイレ休憩が取られた。トイレに行く人、お土産屋さんを見る人がいたが僕は近くの椅子に腰掛け、同じように近くの椅子に座って待っていた1人の女性に声をかけた。女性はアイルランド人の方で1人でツアーに参加したようだった。
トイレ休憩が終わると、ニャンさんがツアー参加者を集めてメコンデルタの地図を前に「メコン川にはフロントリバーとバックリバーがあって…」と説明をしてくれた。
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説明を聞いた後、船着場まで移動した。ニャンさんから「似たような船が多いので、乗り間違えないように注意して下さいね。皆さんが乗るのは11番の船です。」と注意喚起を受けながら船へと乗り込む。
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船のエンジンがかかり、茶色のメコン川を進んでゆく。川の中に何か生き物がいるかもしれないと思い川面を見ても何も見つからず、あるのは浮草や流木だった。
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観光用の小型船だけでなく、物を積んだ大型船も行き交う様子から流域に暮らす人々にとってメコン川が大切な存在であることが窺える。
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ニャンさんが何か言い、指差した方向を見ると水上家屋とそこで生活している人達がいた。
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船は進んでゆく。
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Dragon island
15分程で最初の島であるDragon islandに到着した。
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島に上陸しヤシの木やバナナの木が繁る道を進むと、ココナッツキャンディー工場に辿り着いた。ニャンさんがココナッツの割り方を実演してくれた。
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割って集めたココナッツミルクを撹拌機で混ぜながら煮詰める。
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煮詰めて水分を飛ばした後、ココナッツキャンディーの塊をめん棒で伸ばしていく。
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さらに細く引き延ばしたキャンディーを包丁で一口大に切り、ライスペーパーでできたオブラートで包んでから商品用の包装をする。
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ココナッツキャンディーには様々な味があり、試食させてもらうことができた。もちろんココナッツキャンディーを購入することもできる。
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工場の中にはココナッツキャンディーやココナッツクラッカー以外にもお土産が置いてあり、その中でも強烈だったのがアルコール度数が43度ある蛇酒だ。
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興味深々でショットグラスで試飲したのだが、喉が焼けるようだった。
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蛇酒はお土産用の小さいボトルに入ったものもあるということで、親子で参加していたオーストラリア人の親子のお母さんはニャンさんに、オーストラリアに持ち込めるか尋ねていた。
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ココナッツキャンディー工場を後にし、小型ボート乗り場へ向かう。
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Ben Tre
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ボート乗り場に着き、目に入ったその光景はジャングルそのものでここをボートに乗って進んで行くと思うととてもワクワクした。
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ボートは両脇から緑が迫るような細いところも軽快に進む。
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しばらく進み、一度Ben Treの陸地に上陸した。
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エンジン付きの小型ボートから、4人乗りで現地の人が漕いでくれる手漕ぎボートに移るために待っている時にインド人の女性3人組と仲良くなった。
姉妹とその友達という関係で、ハノイから南下して来たそうだ。皆口を揃えてハノイとホーチミンは気温が全然違う(oppositeとはっきり言っていた)、北部は寒いという。そして、僕がハノイへ行くんだと伝えると「ビアストリートは絶対に行った方がいいわ!」と教えてくれた。
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手漕ぎボートが4人乗りなので、インド人女性3人組と僕の4人で乗ることになった。
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エンジン音がない為、鳥のさえずりや得体の知れない動物の鳴き声がよく聞こえる。
人数分のノンラー(ベトナム伝統の麦わら帽子)があったので被ってみると涼しく感じられた。
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何度か両側の緑にぶつかりながらも、協力してパドルで押し返しながら進む。
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手漕ぎボートに乗ったポイントに戻り、ボートから降りる際に船頭さんに10,000ドンチップを渡した。
昼食の時間らしく、会場へ向かうと円卓に昼食が用意されていた。改めてこのメコンデルタツアーの参加者を見渡してみると、オーストラリア人の女性親子、白人男性2人、神経質そうなフランス人女性2人組、インド人姉妹&友達、デンマーク人女性1人、ドイツ人女性1人、アイルランド人女性1人、そして自分といった感じだった。
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僕はインド人姉妹&友達、デンマーク人女性、ドイツ人女性、アイルランド人女性と同じ円卓で昼食を取った。空芯菜の炒め物も揚げ春巻きも美味しい。インド人姉妹たちと日本でRRRが流行っているという話しをして盛り上がった。
昼食を食べ終えてから、デンマーク人女性とドイツ人女性に少し周りを歩いてみない?と誘われて3人で散策することとなった。
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2人は元から友達同士なのか、このツアーで知り合ったばかりなのか分からなかったが仲が良さそうだった。
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デンマーク人女性は今日の夜にデンマークへ帰国予定で、1ヶ月ほどいたベトナムを離れるのは悲しいと話す。「ベトナムは暑いけど、デンマークは寒くて気温差がすごいわ!」といい、歩きながらベトナムに来てからの宿でのハプニングを話してくれた。
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2人ともインド人姉妹と同じようにハノイとホーチミンとでは気温が異なることを教えてくれた。
集合時間が近づいてきたので来た道を戻る。その途中、腕が綺麗な青色のオニテナガエビの生簀を見ていたとき日本人のグループがいることに気づいた。彼女たちに、「彼ら日本人だね」と言うと、「話さなくていいの?」と言われたが、僕が「話したくないんだ」と言うとその気持ちを分かってくれたようだった。
他のツアー参加者達と合流してから、展示されている動物を見た。
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ワニはこの近くで捕獲された個体だという。
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蛇に関しては3日前に木の上から小型船に落下したのを捕獲した個体だというから、船に乗っているときは注意しないいけないなと思った。
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動物を見てから、もう一度小型ボートに乗り小型船の船着場まで移動した。
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小型船に乗り換え、次の島へ向かう。
僕が船で写真を撮っていると、船首にいたニャンさんが場所を移り「前にどうぞ!」と場所を譲ってくれた。前方遠くに見えるMY THOの街並みを写真におさめた。
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Unicorn island
小型船に乗り15分程してUnicorn islandに到着した。上陸すると東家へと案内された。
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テーブルにはカットされたパイナップルやドラゴンフルーツそしてお茶が用意されており、すぐに現地の方々による民族音楽の演奏が始まった。
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胡弓や現地の楽器の奏でる音楽と女性の歌声はエキゾチックな雰囲気で聴いていて心地よい。
(左の男性の弾くギターの指板に注目してみると抉れている。弾きやすいように削ったという話しだったのだが、スキャロップ加工って世界共通なんだ!というところに感動した)
演奏を聴き終え、チップを渡してから次の場所へと移動する。
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歩いていると、「コッコッコッ」と鳴きながら側を鶏が走っていく。
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途中Monkey Bridgeを渡ったりしながら、ニシキヘビを首に巻くことができる場所に辿り着いた。
オーストラリア人のお母さんにスマホを渡して僕がニシキヘビを巻いている姿を撮ってもらった。
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インド人女性はニシキヘビを首に巻いたとき絶叫していた。
僕は8年前に、バンコクにあるタイ赤十字協会の血清センター(Snake Farm)で同じようにヘビを首に巻いたことを思い出した。
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ツルツルとした感触とヒンヤリとした冷たさでこれが気持ちいい。
写真を撮ってもらっていたら、ヘビがヌッと頭を上げて舌を出して僕の頬をペロペロ舐め出した。(舌も冷たい)オーストラリア人のお母さんが”The snake is kissing you!”といい周りの人たちもビックリしていた。
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ヘビを首に巻いた後、また異なる東家へと案内された。メコンデルタはハチミツも有名なようで、ハチミツに柑橘類の果汁を絞りお湯で溶かした飲み物を飲ませてもらった。
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ハチミツや蜜蝋を使った化粧品が売られており、購入することができる。女性の何人かがその化粧品を購入していた。
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ハチミツを堪能してから、Unicorn islandを後にし船でMY THO MARINAへ戻った。船頭さんにお礼のチップを渡した。
このメコンデルタツアーは280,000ドンで「安い!」と一昨日予約したときに思ったのだが、ツアーの初めにニャンさんから「船頭さんや奏者の方達によかったらチップをお渡しください」と話があり、ちゃんとチップという形でお礼をすることができて良かった。
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時刻は14:30。あっという間にメコンデルタツアーは終了し、ミトーからホーチミンまでバスで戻る。
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16:30過ぎにホーチミンのAN TRAVELのオフィス前に着き、ニャンさんやツアー参加者の方達にさよならを言って解散した。
サイゴンの夜
ホテルの部屋へ戻ると、ベットに洗濯物が置かれていた。柔軟剤の香りをすっかり気に入って、今朝またランドリーに出していたのである。
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部屋のシャワーで汗を流し、ベットでくつろぎながらあることを調べていた。
というのもミトーからの帰りのバスの中で、
Good morning VIETNAMの映画に出てきてるようなアメリカンレストランが中心地に一軒だけ残っている
という情報を得ていたのだ。
今夜はホーチミンでの最後の夜。Hotel Majestic SaigonのBreeze Sky Barでサイゴン川を眺めながらミス・サイゴンを頂いて過ごそうと思っていたのだが、夕飯は何処で食べようか決めていなかったのである。
ホテルに戻り、Tシャツや靴下の洗濯をするとひと仕事した気分になり、シャワーを浴びるとまた屋上のテラスにあるバーに行った。軽く一杯呑みたくなったのだ。
通りすがりにカウンターの奥にいたバーテンに訊くと、このバーには「ブリーズ・スカイ・バー」という名前がついているのだという。ブリーズは、BREEZE、そよ風の意なのだろう。
席は前日と同じくオープン・エアーのサイゴン河を見下ろせるところに坐った。何を呑もうか考えていると、ボーイが持ってきてくれたメニューの中に「ミス・サイゴン」という名のカクテルがあるのが眼に留まった。
それは、たぶん、イギリスで作られ、世界的にヒットしたミュージカル『ミス・サイゴン』から採った名前なのだろう。『ミス・サイゴン』は、『マダム・バタフライ』のベトナム版とでもいうべきもので、サイゴン陥落によって引き裂かれたアメリカ兵とヴェトナム女性の悲恋の物語だ。いつか迎えにきてくれることを信じて、アメリカ兵との間にできた子供を育てる健気な女主人公。しかし、その女主人公に次々と不幸が押し寄せ、ついには自ら命を絶つことになる。
そのミュージカルの題名を冠したカクテルとはどのような味のものなのだろう。私はそれを一杯もらうことにした。
インターネットを使って探してみたが、どうしてもそのアメリカンレストランを見つけることはできなかった。
時計は18:00を指している。僕はそのアメリカンレストランを探すのを諦め、世界の歩き方で紹介されているレストランに行くことにして部屋を飛び出した。
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9月23日公園のGrab BIKEの乗り場からバイクを呼ぼうとしたとき、9月23日公園の地下にあるCentral Marketを訪れていないことに気がついた。
少し寄り道しようと思い、Central Marketへ続く階段を降りる。
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地下に降りてみると、衣服類を扱うお店が集まる買い物エリアと飲食店が集まる飲食エリアが広がっていた。
一瞬ここで夕食にしようかと考えたが、周りを見渡すと人はまばらだったので、地上に戻りGrab BIKEを呼んでホーチミン市博物館の近くまで走った。
レストランがある住所でバイクから降ろしてもらうと、周りはアパートが立ち並ぶ暗い場所だった。
路地裏のアパート屋上に店を構える大人気店。
と紹介されていたので、周辺をウロウロしていると白く光るレストランの看板が僕を導いてくれた。
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4階まで階段を登ると、半屋外の開放的な雰囲気のレストランがそこにはあった。(4階だが1階がGround floorなので実質5階)
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大人気店というだけあってレストランには大勢のお客さんがいた。多分、海外の世界の歩き方のようなガイドブックでも紹介されているのだろう。(先程別れたばかりのメコンデルタツアーで一緒だったドイツ人女性がいた!お互い話しかけなかったがどちらも気がついた)
僕は予約を取っていないことを伝えると、オープンエアの客席へ案内され、6人の欧米人と相席になった。
店員さんから渡されたメニューを見てみると、何とミス・サイゴンがあるではないか!僕はとりあえず、ミス・サイゴンとししゃもの唐揚げのようなものをオーダーした。
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6人の欧米人は、僕の左隣にカナダ人の初老のご夫婦、左先隣にオーストラリア人の若いカップル、そして右隣は50代くらいのイギリス人夫婦だった。
最初は全然話さなかったのだが、僕が左隣のカナダ人のおじさんに、「何処からいらしたんですか?」と尋ね、僕が東京から来たことを知ると会話が始まった。カナダ人夫妻は結婚42年目で3週間でアジアを周遊してるという。「君は?」と尋ねられたので、大学の春休みを使ってベトナムを一人旅しているんだと伝えた。
「大学では何を専攻しているのかね?」と言われ、「情報学と理工学です。」と答えると、「それは実用的だね」と言い、さらに「兄弟はいるか?」と言われ、「社会人の姉が1人います」と答えた。
店員さんがミス・サイゴンを運んできてくれた。一口飲んでみると甘くてどこが苦味のある味わいだった。
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「お姉さんは大学で何を専攻されていたのかね?」と尋ねられたので、「社会学です」と答えると、カナダ人のおじさんは、「本当かい!?僕はカナダの大学で社会学の教授をしているんだよ!」と言った。すると今度は、話を聴いていた右隣のイギリス人夫婦の奥さんが「嘘でしょ!私もイギリスの大学で社会学の教授をしているのよ!」とまさかの社会学の教授同士にサンドイッチされる状況になり、さらに左先隣のオーストラリア人カップルも加わって7人で話が盛り上がった。
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オーストラリア人カップルは何と、結婚したばかりの新婚さんでハネムーンでベトナムを訪れていた。とても素敵なカップルで、旦那さんが僕が東京から来たことを知ると来週仕事で東京に行くんだと教えてくれた。日本のカラオケが大好きで、日本に来るたびにカラオケに行くらしい。
僕は牛肉の料理と、ビールのバーバーバーを追加で注文した。ベトナムに来てから覚えた言葉は、こんにちはのXin chào、ありがとうのCám ơn、そしてビールの名前のバー・バー・バーの3つしかない。しかも、バー・バー・バーに至っては、333なので実質覚えたのは数字の3のバーだ。この旅が終わるまでにもう少し言葉を増やさなくちゃなと思った。
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イギリス人社会学者の奥さんに、「ベトナムには1人で来たの?」と尋ねられたので、「大学の春休みを使って、ホーチミンからハノイまで北上する一人旅をしに来たんです。コロナ禍で海外へ行けなかったのですが、母や姉がバックパッカーだったのでそれを真似しているんです。」と僕は言った。僕はこのときimitateという単語を使ったが、ただ真似ているだけなんだろうかと思った…いや。
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そう、母は大学在学中、社会人、そして結婚して僕らが産まれるまで世界中を旅するバックパッカー、そして社会人になった姉も同じようにバックパッカーだった。僕は小さい頃から旅先での話を聞いていたから、いつか自分もバックパック1つで海外を一人旅したいと思ってた。だからベトナムに来たのだ。
するとイギリス人の奥さんが「私には兄がいてね、その兄がバックパッカーだったから私も真似して若い頃はバックパッカーだったのよ。そして私の娘も同じようにバックパッカーとして旅をしているわ。」と言った。
すると話を聴いていた6人全員が、一人旅はいいぞという話をした。皆元々バックパッカー、旅人だったのである。
オーストラリア人夫婦は明日の朝が早いということで、先に帰った。帰るとき、”Good luck”と言って握手をしてくれた。
それからまた333を頼んだ。5人で英語で色んな話をした。日本の天皇制からイギリスのドラマまで。(小さい頃イギリスのドラマをよく観ていたといい、何を見ていたのかたずねられたので、Dr.WhoとLittle Britainというと、Littele Britainと言ったときは不思議そうな顔をされた。そりゃそうか)
イギリス人の旦那さんは優しい人で、「英語のスピードが速くないかい?」と心配してくれた。僕は「英語で何を言っているのか聞き取れるんだけど、パッと話せなくて少し時間がかかるんです。」と答えた。(僕が飲んでいたミス・サイゴンに興味を持ったようで、説明するのに苦労した)
時計をみると23:00。僕は明日の早朝サイゴン駅から寝台列車に乗ってフエまで行かねばならないことを伝えて、先に帰ることにした。帰り際、オーストラリア人夫妻は帰ってしまったが全員で写真を撮り握手をした。”Good luck!”,”Have a nice trip!”,”Thank you for a wonderful night.”と僕を送り出してくれた。
僕はお礼をいい、会計を済ませ、店を出た。
バイクの後ろに乗りながら、もうBreeze Sky Barには行かなくて大丈夫、これで明日思い残すことなくサイゴンを発つことができると思った。9月23日公園のGATEで降り、朝は閉まっていた角の両替所で10ドル両替した。
ホテルの部屋に戻り、シャワーを浴びてバックパックに荷物をまとめる。
僕はすぐに眠りについた。
寝台列車に乗り遅れないように…
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