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プロローグ

これは僕のベトナム北上ひとり旅の記録である。大学2年生の「今」感じたこと、思ったことを文字にして残したい。忘れないように…

深夜特急

2020〜2021に僕は浪人中で河合塾に通っていた。母校では毎年半分くらいの人が浪人するため、AB•BBクラスには顔馴染みが多くいた。(現役時が最後のセンター試験の年で、浪人すると初回の共通テストを受験することになるためか例年よりは浪人生が少なかったようだ)

母校のラグビー部の練習場所から

ダイヤモンド・プリンセス号での集団感染以降、爆発的に広がったコロナウイルスによる混乱は僕の浪人生活にも影響を及ぼした。4月から6月までの講義が全てオンデマンドとなり、自宅で受講することになったのである。現役で大学に進んだ同期も同じような状況だったので、たまにカフェで会ってカードゲームをしたりしてその時期は意外と楽しかった。皆活動を制限されていたため、高校の同級生が前進している中で自分だけ足踏みしているような浪人生特有の感覚にはならなかったのである。ある意味「浪人しやすい」年だったかもしれない。

当時描いていたアウトサイダーな絵。病んでたのか!?
英文はDaft PunkのWithinの歌詞の一部

Daft Punk - Within

話を戻そう。そんな中たまたまYouTubeで見つけたのが主演・大沢たかお でテレビドラマ化した深夜特急だったのだ。(多分違法アップロード)
パンデミックで世の中に閉塞感が漂う中それは僕の目にとても魅力的に映った。

あれ6巻目どこだ?

深夜特急は沢木耕太郎による紀行小説であり、沢木自身が70年代に香港からイギリスまで電車と乗り合いバスだけで旅をした実話が元となっている。


テレビドラマは、

劇的紀行 深夜特急’96〜熱風アジア編〜
劇的紀行 深夜特急’97〜西へ!ユーラシア編〜

劇的紀行 深夜特急’98〜飛光よ!ヨーロッパ編〜

の3部作で僕が見つけたのは1作目の熱風アジア編だった。ドラマは沢木役の大沢たかおが日本を発つ前に、新宿三丁目の「どん底」で友人たちに旅の話をするシーンから始まる。

どん底。土日は混んでいてなかなか入れない
沢木 「旅行こうかと思ってる」
友人達 「どこに?」
沢木 「インドのデリーってあるじゃん。デリーからロンドンまで」
友人達 「ほぇー すげえ距離あるぞ」
沢木一人称の語り 「日本を発つ前に友人達で話すと意見は半々に分かれた。しかも乗り合いバスでと言うと9対1になった」
友人達 「仕事入ってるんだろ」
沢木 「行ける...いやいや、行く」
友人 「じゃあ賭けるか?」
沢木 「いいよ。その代わり先にお金払って。もし行けなかったら倍にして返す」
友人達 「いいよいいよいいよ」
沢木 「そんで半年後にロンドン行くじゃん。ロンドン着いてロンドンの中央郵便局があるから、そっから『ワレセイコウセリ』って電報打つから。それでそれ結果だよ」
友人達 「しょうがねえなあ...」

2ヶ所のストップオーバーができる航空券を手にし、旅は香港に降り立つところから始まる。ドラマの撮影が行われた時期はまだ香港がイギリス統治下であり、まもなく返還されることにも触れている。(大沢たかおが香港で仲良くなった青年に飲茶をご馳走してもらう。その後彼との会話の中で香港が中国に返還されたらどうなると思うか尋ねるシーンがある)

2018年12月台北、迪化街(問屋街で見ているだけで楽しい)近くの民生西路にて。

2019年から2020年にかけてメインランドへの逃亡犯引き渡し条例の改正で香港は揺れ、民主化デモが起こった。願わくばその前に香港を訪れたかった。街の空気、雰囲気は変わってしまったのかな... あと20年程早く生まれていれば写真集でしか見たことのない九龍城砦を訪れてこの目に焼き付けることもできたかなとも思う。

かなり前に図書館で借りたので記憶が定かではないが、この本だったはずだ

そういえば先日、NHKの映像の世紀(映像の世紀は毎週月曜22:00からNHK総合にて放送。その前の21:00からはTBSでクレイジージャーニーが復活して放送されている。面白くて大好きなのだが、ゴールデン帯に移動したため以前の佐藤健寿さんの死体農場のような回は見られないかも)でブルース・リーの回が放送された。イギリス人と中国人とのMixedである母と中国系の父との間に生まれ、どちらの社会でも生きづらかったリーの短い一生に迫ったドキュメンタリーである。

実は先に挙げた香港の民主化デモにおいてブルース・リーの言葉、
“Be water my friend.”
がスローガンになり、水革命(Water Revolution)と呼ばれているそうだ。"Don’t think.Feel!”はStar Warsでヨーダがルークに?言う有名なセリフなので知っていたが、”Be water my friend”は知らなかった。長年所在が分からずロストインタビューと呼ばれていたインタビューでブルース・リー本人が話す様子を見ることができる。

15分38秒あたりからその言葉がある。

“Empty your mind.
Be formless, shapeless like water.
If you put water into a cup, it becomes the cup.
You put water into a bottle and it becomes the bottle.
You put it in a teapot it becomes the teapot.
Now, water can flow or it can crash.
Be water my friend.”
https://youtu.be/LMWZoEtoF1c

映像の世紀のテーマ曲「パリは燃えているか」も聴いてみてほしい。番組自体も素晴らしいのだが(やっぱりNHKすげえと思わせられる)、この曲が一役買っているのも確かだ。「パリは燃えているか」はヒトラーが第二次世界大戦でドイツ軍がパリから撤退する際に発したとされる言葉で、パリを失うくらいなら跡形もなく燃やせと命令したそうだ。

あとそうそう、高校を卒業する前に同じラグビー部の同期だったやつで今も親友のM(図書委員長で全権を握っていた)に、「図書購入費が余ってるんだけど、何かリクエストある?」と言われて当時他で借りて読んでいたこの2冊をリクエストした。

当時2作目が出版されていたが、まだ中国語から翻訳されておらず1作目だけ読めた

本をリクエストしたら、Mに「じゃあ本屋行くぞ」とそのまま学校帰りに三越の下の本屋に連れて行かれて図書購入費で購入した。懐かしい。

チョンキンマンション=重慶大厦

またかなり話が脱線してしまったが、この「チョンキンマンションのボスは知っている」が重要で、大沢たかおが香港で泊まる場所がなんと重慶大厦だったのだ!(カオスな重慶大厦は今なお香港のネイザンロードにある)
ということもあって、浪人中の僕は深夜特急のテレビドラマ1作目に引き込まれ(その2年前に行った台湾の様子に重ねて観ていたところもある)、2作目のユーラシア編、3作目のヨーロッパ編とイッキ見してしまった。ここまで香港に関することばかり書いたが、沢木がロンドンを目指してユーラシア大陸を横断する中で印象深い描写は他にも沢山ある。

CANON AE-1 PROGRAMで撮影。フィルム代と現像代が高く最近は撮っていない。

その後今通っている国立大に受かり、1年間の浪人生活を終えた。東京に帰ってきた僕は、小説の深夜特急を購入し夢中になって読んだ。そして深夜特急は僕の旅のバイブルとなった。

一号線を北上せよ


ここではない何処かへ行きたいと思うと胸が締め付けられるような感覚になり、暫くすると泡のようにその感覚がフェードアウトするということが続いていた。

現役で進んだ高校の同期の友人達は就活や院進の話をしており、自分にとって行くなら今年がチャンスだと感じた。(次の機会は大学の卒業旅行!?と考えると、今行かなければと思った) コロナによる渡航制限がだいぶ緩和されてきたこともある。(コロナ禍でなければ1年の時から世界中を貧乏旅行したかった)

そう、今回はモコモコと湧き立った何処かへ行きたいという思いが消えることはなかったのである。僕はすぐにスカイスキャナーで一人旅の候補地を探した。(スカイスキャナーの良い点は、目的地が決まっていない時に「全ての場所」を目的地にして検索できること、悪い点は表示された旅行会社のHPから購入しようとすると変なオプションをつけられて多く料金を取られる場合があること。あくまで最安値を比較するのに利用しよう)
条件は、
•貧乏旅行ができる
•入国後の観察期間などの制限がない
•行ったことのない国
の3つで、香港、ベトナム、マレーシア、韓国などが候補に挙がった。
どの国に行こうかと逡巡していた時に、朝刊で沢木耕太郎の新刊「天路の旅人」に関する記事を見つけた。

記事を読んでいたときに、ふともしかしたら深夜特急以外にも紀行文があるのではないかと思った。そして調べてみるとホーチミンからハノイまでベトナムを北上する「一号線を北上せよ」という本があるではないか!!僕はすぐにベトナムへの航空券を取った。

旅の記録

いつもは紙のノートか手帳に旅の記録を記すのだが、今回利用するLCCのベトジェットエアは預け入れ荷物なしで機内持ち込みが7kgまでということもあり(マジです)このnoteに記すことに決めた。(成田→ホーチミンが17,730円だから文句はいえない) noteだと文章だけでなく画像やURLなどを埋め込むことができて便利なところも良い。文章を常体で書いているため、堅い雰囲気かもしれないが気軽に読んで欲しい。(noteには1日遅れで夜に投稿する予定である)

2015年8月Nakhon Pathom,Phra Prathom Chediにて。アイス投げおじさんがいてアイスキャッチをしたな

旅は2023/2/26〜3/7まで。8年ぶりに東南アジアの熱風を感じてきたい。

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