2024年度前半に注目された働き方「日本版ライドシェア」 - Alternative Work Lab Letters -

2024年に入ってから働き方改革は引き続き行われており、さまざまな法案が施行されるなどしています。その中でも大きく話題となったのは以下の3つではないでしょうか。

1、2024年問題と呼ばれる「製造業」「運送業」などの残業時間規制
2、メルカリハロやリクルートなどの参入による「スポットワーク」の拡大
3、日本版ライドシェアの開始

もちろん、それ以外にも変化はありましたが、この3つが非常に大きな変化として挙げられるのではないかと思います。今回はその中でも「3」の日本版ライドシェアの開始について書いていきます。

日本版のライドシェアは2024年4月に開始されましたが、タクシー会社が運行責任を持つ、一部地域に限られるなど海外で展開されている個人のギグワーカーが自家用車を利用し、タクシー業務を行うUberのようなものとは一線を画しています。これには賛否があり、現在も本格的なライドシェア解禁に向けて議論が継続されていますが、第一歩として日本版ライドシェアはスタートしています。

日本版ライドシェアの概要はこちら

上述したような議論の他に、個人的にはいくつか別の論点が隠れているのではないかと思います。ライドシェアが議論された背景にはさまざまな課題があるのですが、地域によって異なるニーズが一緒に議論されており、具体的には、以下の3つが同時並行的に進んでいます。

1、地方で高齢者が多く車がないとどこにもいけないようなエリアで、地域の足としてのライドシェアの解禁
2、観光地でインバウンドの盛り上がりで、タクシーが足らない対策として
3、東京のように大都市圏でタクシーが捕まりにくいというケースの対策として


この3つは全くニーズもその背景にある課題も異なるがゆえ、何でもかんでも「ライドシェア」を解禁したら解決するということはありません。

例えばですが、地方の高齢者が、どこかに出かける足として、個人が自家用車で近所の人を相乗りして送っていくようなライドシェアは本格的に早く検討していかないといけない、喫緊の課題です。さらに言えば、そういった地方では、ライドシェアを解禁したとしてもその運転手を担う若者が少ないといった問題が存在することも少なくないでしょう。そうなると地方に関してはライドシェアではなく、一足飛びで自動運転の導入を進めていく方が現実的なのではないかとすら思います。

一方、東京のような大都市でタクシーが捕まりにくい課題についてもライドシェアで解決するのか考える必要があると思います。例えば、タクシーのニーズの強い、雨の日や深夜などの時間帯にライドシェアを行うギグワーカーが多くないと成立しないことになります。しかし、現実を見ると、食事を運んでくれるUberEatsでも本当にデリバリーを頼みたい、天気の悪い日などは配達員がいなくて頼めないことが少なくありません。もしこれと同じことが起きるのであれば、都市圏でライドシェアを導入したとしてもタクシーが拾いにくい問題は解決しないことになります。

また他の政策を導入するプロセスについても課題がないとは言えません。現在は実証実験を通して、ライドシェアの課題が解決されるのかを検討しているタイミングですが、本当に地域の交通手段の課題が解決するのか、ライドシェアに参加する個人のドライバーさんがいるのか、そして安全面は担保されるのか、これらを確かめる必要があります。

しかし、今のライドシェアの実証実験は、タクシー会社しか実施できず、本当に上記のような検証が出来ているのか疑問です。参画するタクシー会社も少なく、本当にニーズがある地域で実験ができていません。さらには現在はライドシェアを行おうと思えばタクシー会社に登録する必要があり、経験がなくてもスマホ1つあれば、空いた時間に好きなときに行えるといった本来のライドシェアのドライバーとは異なります。このように、本来ライドシェアを解禁するかどうかを決める際に必要な検証項目を明らかにするための設計になっていない点は気になるポイントです。
 
また、せっかくであればライドシェアを解禁する・しないの二択ではなく、しっかりとデータやエビデンスに基づいた意思決定ができるプロセスの構築、そしてその過程がオープンになり、政策決定のあり方もアップデートされていく機会になればと考えています。


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