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バカボン爺の昔話、癌細胞を見た、

11月27日
20年も前の事だけど、LAのゴーナム博士の研究室を訪問したことがある。
研究資金を投資するかどうか投資家には分からないので、一緒に行ってくれと誘われて同行した。
ゴーナム博士は、癌細胞を培養して、いろいろな試験をする専門家で、研究室の中を案内してくれた。
当時、博士は、癌細胞を攻撃する免疫細胞のN K細胞を扱っていた。
N K細胞を見せてくれというと、
はいよと、気軽に私を顕微鏡の前に招いて覗かせてくれた。
癌細胞が見える。
そこに、元気なNK細胞を投入すると、NK細胞は癌細胞にすっと寄って行く。
そして針のように見えるものを突き刺して、2、3分で癌細胞がパーンとはじけて壊れた。
衝撃的な光景だった。わずか2分でNK細胞は癌細胞を破壊するのですか?
「そうですよ。NK細胞が元気だと、簡単に癌細胞をやっつけるのです。」
あの針のように見えるものは何ですか?
「NK細胞が、癌細胞に投げ込む酵素です。」
これだと、がんが一夜にして縮小することもあり得ますよね!
「そうなんです。でも、NK細胞に元気がないと、NK細胞は動かないのですよ。」
じゃ、元気なNK細胞と元気がないNK細胞の違いは何でしょうか?
「それが、見ただけでは分からないのです。」
20年経った今でも、誰も、まだ分かっていない。

ちょうど同じ頃、偶然にUCサンフランシスコにいたエリザベス博士を訪問したことがある。彼女は、癌細胞の成長過程を分類して4段階に分けた学者だった。
その写真を見せてくれた。
人は、毎日数千個の癌細胞ができているが、それを免疫細胞が掃除している。
その最初の写真は、正常細胞の中に癌細胞が混じっている写真だ。
ちょっと見ただけでは、どれが癌細胞なのか私には分からなかったので、教えてもらった。
次は、癌細胞が小さな塊になっている写真だが、正常細胞の中に混じっている。
ここから、大きくなるのですか?
「そう、ここから大きくなるものが出てくる。」
次は、がんの小さな塊に血管が出来始めている写真だ。
お〜血管がありますね、癌が積極的に栄養を取り始めるのですね。
「そう、ここからは急に大きくなってきます。」
最後は、大きくなった癌細胞の写真だった。

ちょうどその頃、私は抗酸化物質を作っていた頃だったので、質問した。
強い抗酸化作用を人に与えると、がんを予防できると考えますか?
「最初の正常細胞に混じって、まだ塊を作っていない状態だったら、癌を予防できるかもね。多分ね。でも、少しでも、独自の血管を持つようになると、多分無理だと思うよ。」

以上の二人の癌研究者との出会いは、癌とは何かを考えさせる大きな経験だった。

私は、漢方医50年の経験の中で、二人だけ、末期癌で余命数ヶ月と言われてから、不死身のように生き返った人に出会った。

一人は退役軍人のTo-ge大佐だ。スタンフォード大学で大腸癌で余命数ヶ月と言われていた。すぐに軍を辞めて、楽しいことだけを毎日続けたところ、2年後にがんは消えていたという人だ。ひたすらに明るい人だった。けど、その奥さんは、疲れ切っていた。どうしてそんなに疲れ切っているのですかと聞くと、「主人は自分が楽しいことしかしないので、後始末が大変なんです。」
そういう裏事情もあるかもね。

もう一人は、UCバークレイのコンピューターサイエンスの学者のリー博士だった。
UCサンフランシスコで、もう手のつけようがない脳腫瘍で何も出来ない状態と言われていた。死が目前に迫っていた。西洋医学ではもう不可能ですから、何でもチャレンジしてくださいと言われて私のところにやってきた。
「何か方法がありますか?」と聞かれて、
私は、正直に、漢方でもできることは何もありませんと答えるしかなかった。
ただ、ゴーナム博士の研究室で見た経験を話して、どんなに癌があっても、人の生命力が勝てる可能性はあるかもしれない、と思うと言うしかなかった。
「じゃ、その人の生命力が勝てる可能性とは何ですか?」
私自身に確信はありませんが、漢方医としての経験から言えば、自分が変わることだと思います。
人は、生まれた環境、教育、国の文化に縛られて自分という意識を持っています。その日々の自己意識が、自分を作っていますから、その自己意識を全部捨てて、新たな自分になれたら、新しい生命になると思います。
「その自己意識を捨てた状態とはどういう状態でしょうか?」
人は、人間関係とか社会意識の中に閉じこもって、ほとんどの人生を過ごします。いわば、自分が作ったカプセルの中にいます。
そこから出て、生命の根本を与えている大自然というか、神というか、仏というか、そういう命の根源とだけ対話している状態じゃないでしょうか?

実は、そこまでしか覚えていない。
それから、私は、ハワイに移って植物の研究に移ったのでサンフランシスコを離れた。ところが、5年後、サムソン電子の副社長だったヤン博士から電話があった。
自分の病気についての相談だったが、
急に、「あのリー博士、まだ生きていますよ。」と言う。
死んだだろうと思っていたから、ほんとうに驚いた。
えっ彼は何をしているのですか?
「リー博士は、僧侶になって、まだ、生きています。」
すごい話だと思う。
UCサンフランシスコが匙を投げた状態から、生きている。
多分、リー博士は、生死を超えた中にいるのでしょう。

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