第二話 保育所

僕は新しい家で大事に育てられすくすく成長した。日中は、もっぱら祖父母の側で昆虫を捕まえたり、畑仕事や内職のお手伝いというか真似事をしていた。

祖母は山菜採りが大好きで、春には毎日のように山へ登ってはたくさんの山菜を採ってきた。僕も一緒にゴミを採ったり、ゼンマイをもんだりさせてもらった。

祖父は川でカジカを採るのが大好きで、夜になると川に行き明け方までやっていた。その祖父母のおかげで僕は、山菜も川魚も大好きになった。

そして僕も成長し、近くの保育所に通うことになった。

保育所では初めて会うお兄ちゃん、お姉ちゃんたちがたくさんいてとてもワクワクしたのを今も覚えている。毎日が新鮮で楽しく、夢中になって遊んだ。

全員が遊ぶのに夢中で、おやつの時間になっても誰も集まらないので保母さん方が、かくれんぼの鬼のようにそれぞれの子供たちを見つけては口にメンコちゃんゼリーを入れるのだった。僕は遊びを中断されるので次第にゼリーが嫌いになった。

よくやっていた遊びというのが、柔らかいゴム製の大きな輪が保育所にはたくさんあり、それをいろいろ組み合わせて浮き輪のように腰に巻いて飛行船に乗った気分でそこら中走り回っていた。

そして廊下を走っていると必ず、給食のおばさんが待ち構えていてひとりひとり捕まえてはほっぺに濃厚な ”ちゅー” をするのだった。

僕らはその ”ぶっちゅーおばさん” に捕まらないように飛行船に乗りながら走り回った。そんな給食のおばさんがみんな大好きだった。

僕は一人っ子なので、わがままで遠足に行くと帰りのバスの時間になっても100円で動く電車に乗りたくてダダをこねて母を困らせた。

でも普段はとっても怖くて人相も組長のような園長先生だけは僕が気のすむまで一緒に遊んでくれた。みんなはバスの中で僕と園長先生が遊ぶのを眺めているのだった。


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