脊椎圧迫骨折の考察

誤診の結果症状が寛解せず、慢性症状に移行した頃に当院にご相談にお越しになるケースが多い。
誤診のケースで最も多いのが半月板損傷、次いで椎間板ヘルニア。
他にもいくつかあるが、脊椎圧迫骨折(VCF)も誤診されやすい症状の一つ。
整体やカイロの治療院でVCFを疑わずに腰痛として治療を進めてしまうケースがあり、特に「揉み」「ほぐし」といった旧来のマッサージ系整体院で誤診のケースが多いようだ。

今回の記事はVCFについて現在明らかになている事実をまとめてみたい。
日本の治療家でVCFを重視した教育を受けた人は少ないはずなので、知識の更新に役立ててもらえれば幸いだ。

VCFは骨粗鬆症の後遺症であり、米国では年間150万件の骨粗鬆症性骨折のうち約70万件をVCFが占めている。発見されない脊椎圧迫骨折の多さを考えると実際のVCF発生率はもっと高いと考えられており、臨床的に診断される脊椎圧迫骨折はわずか3分の1程度とされている。

椎骨の骨密度は加齢とともに確実に減少し、高齢女性では80歳代になるまでに骨量のほぼ半分を失うと言われている。
米国におけるVCF発生率は、50~60代中年女性では年間発生率0.9%、有病率5~10%であったものが、80歳以上では発生率1.7%、有病率30%以上と増加する。米国におけるこの年齢相関有病率は、欧州椎骨骨粗鬆症研究(European Vertebral Osteoporosis Study)が発表した欧州における有病率と非常に類似する。

椎体骨折は長期的な罹患をもたらす可能性があり、経済的な総費用は急性期治療の費用よりもはるかに大きい。痛みを伴うVCFの後、最初の1年間だけでも患者は一般人口の14倍のプライマリケアサービスを必要とすることが分かっている。

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