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約6年ぶりのカウンター(前編)

梅雨だ。雨の滴る音を聞きながら、冷房の効いた室内で飲むホットコーヒーが間違いない季節。KOFFEE MAMEYA KAKERUの三木さんから、コラボレーションのお誘いを頂き、昨日無事にイベントを終えたのでコース内容を含めて振り返りたい。

なぜこのタイミングでカウンターに戻る決意をしたのか、まずはこの前編でお話しさせて頂く。後編でコースの詳しい内容を説明するので、興味のない人は読み飛ばしてもらって構わない。瞬殺で予約完売したらしく、告知が不十分だと多方面からお叱りを受けているので、まずは謝罪を…

KOFFEE MAMEYA KAKERUのコンセプトは「様々な分野のプロとのコラボレーションを通してグランメゾン級の体験を作る」こと。以前のSESSIONでは、The Bellwoodの鈴木敦さん、UN GRAINの昆布智成さんと異業種のプロとのコラボレーションだったので、僕に声がかかるとは思っていなかった。最後まで國友さんと三木さんにその真意は聞けていないが、いっその事そのままにしておこうと思っている。

公開イベントでコーヒーをサーブするのは約6年ぶりだと思う。実はずっとカウンターに立つことを避けていたし、お断りを続けていた。ワールドバリスタチャンピオンになって参加したとあるイベントを通して「なぜ僕が作るコーヒーの値段が他の人と同じなのか」と強烈な違和感を抱いた。

これだけ聞くととてつもなく生意気に聞こえると思うが、そもそもコーヒーの価格は誰が作ろうと同じ価格であるべきだ、という不問律が存在していると言えるし、僕はこの手の常識が心底嫌いだ。同時に、お客様に納得いただけるだけの付加価値創出能力を磨く必要があるとも思った。なのでそれ以来、いかに高付加価値をコーヒーで創出するか、という解を見つけるまでカウンターで気軽にサーブしないと決めていた。

実はその解が見え始めたのは、コロナ禍に突入してから。コロナ禍で立ち止まる機会が増え、コーヒーはもちろん日本について学びを深める機会を得たこと、他業種の様々なプロフェッショナルと交流を深めたことで、徐々に準備ができつつあった。

根底には「バリスタの職業価値を信じ続ける」というミッションがある。16歳のキャリアスタート時から今までずっと一貫して、僕はバリスタという職業を信じ続けてきた。

別に職業価値を認めさせたい訳でない。ただ、僕自身が職業を聞かれた時に自信を持って「バリスタです」と言える職業にしたいと思っているだけだ。長時間労働、低賃金を前提としたビジネスモデルを脱却し、原価起点ではなく、付加価値起点でビジネスを構築しないといけない訳で、僕の考えるバリスタ像は、既存のビジネスモデルでは実現できないことは分かっていた。

バリスタはコーヒーを美味しく淹れて当たり前だ。今後はコーヒーを編集する能力次第で付加価値が決まるはずだと信じている。オートメーションによって、バリスタの未来は「省人化もしくは属人化」するはずで、僕は「属人化」する未来に賭けたいと思っている。

回りくどくなってしまったが、KAKERUとのコラボで自分に課したテーマはただひとつ「井崎にしかできないコーヒーの編集」だ。公開イベントでコーヒーのサーブを辞めると決めて約6年の間、メーカーや大学との研究開発や商品開発を通してバーティカルに学びを深めてきたし、他業種との交流や文化へのインボルブメントを進めることでホリゾンタルにインプットをしてきた。そろそろ、アウトプットしても良いのでは?と思っていたタイミングと三木さんにお声がけ頂いたタイミングがしっかり合致して実現したのが今回のイベントだった。後編ではコースの内容を詳しくブレークダウンしてお伝えしたいと思う。


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