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ホメオスタシス 【生理学シリーズ①】

内に海を持つ


生理学を学ぶ上でおそらく再序盤に学ぶのが【ホメオスタシス】という呪文です。【ホメオスタシス】とは日本語で言うと【生体内部環境の恒常性こうじょうせい】のことですね。

いきなりの堅苦しい言葉に、何でこんなことから勉強しなければならないのかと困惑したのは私だけではないかと思います。

しかしながらこの【ホメオスタシス】というのは正に生命活動の核心とも言えるテーマなのです。

今回は生理学における基礎とも言えるホメオスタシスについて簡単に理解できる様になることを目標にしています。これをきっかけに興味を持っていただければ幸いです。

生物というのは生きていく上で適切な体温や体液の量、濃度、pHなどを厳密な範囲で維持しなければなりません。そのために食事や呼吸、排泄などの活動を行なっています。これらの行動は全て内部環境を維持するためだと言えます。

では一体何故この内部環境を維持しなければならないのでしょうか?

少し回りくどいですがそもそもの生命の発生から遡りましょう。

細胞の発生

原始の生命体は単細胞生物であったそうです。
この発生場所は諸説ありますが、おそらく海底であったとされています。
この時陸地は高温かつ紫外線により生命体が生存できる環境でなかったとそうです。
そのため紫外線の影響の少ない海にて生物は発展したと考えられています。
ちなみにこの時の細胞は嫌気性で、酸素は有毒でしたが、そもそもこの時酸素はあまり存在しておらず二酸化炭素が大気の主成分だった様です。

多細胞生物の課題

その後いくつかの細胞が重なることにより細胞の複合体となり、これにより複数の役割を持ってより複雑な運動や機能を果たせるようになりました(多細胞生物の誕生)。
この時問題になったのは栄養の供給源でした。当初は海から直接栄養を受け取り、逆に老廃物は海へと流していました。
ところが生物が大きくなるにつれて細胞がいくつも重なり、海に面さない細胞ができてしまいました。
細胞にとって代謝が行われないと言うことはを意味します。
この深刻な問題を解決するために生物の内側に海と同じような環境を持つようになったのです。これが内部環境であり、細胞外液です。細胞外液がわからない人の為にかなりざっくり言うと血液です。
こうした経緯で生物にとって内部環境は生命活動を維持するために必要不可欠な存在であり、これを維持するための機構を作ったのです。
これがホメオスタシスです。

生物は数多くの進化を遂げる中でさまざまな環境に適応してきました。
単細胞から多細胞へ進化し、植物からより多くの栄養を得るため動物へと進化、重力に抗うために骨を獲得し陸上でも活動できる様になりました。
その中で常に課題であったのが内部環境の維持でした。

内部環境という概念を提唱した生理学者クロード・ベルナールは

「生命現象はいろいろな姿で現れるが、結局は内部環境の恒常性を保つという唯一の目的しか持っていない」

とまで言っています。
実際に恒常性の維持機構としては自律神経系、内分泌系、免疫系が機能しますが詳しくは後ほど解説したいと思います。

二度のエネルギー革命

ここからは少々脱線気味になるので興味があればご覧ください。

多細胞生物になる際、葉緑体をもつ細胞を取り込んだ生物がいた様です。
これにより大量にある水と二酸化炭素を原料に光エネルギーを利用して栄養(グルコース)を作り出すことに成功しました。ご存知、光合成ですね。
この時副産物として発生した酸素は有毒で不要なものとされ、体外に放出されました。この時の大量の酸素(O2)は上空にてオゾン(O3)となりオゾン層として太陽からの強力な紫外線をある程度防ぐようになりました。

更にその後、有毒であった酸素を利用して光合成とは比べ物にならない強力なエネルギー(ATP)を生み出す細胞、ミトコンドリアが現れました。
今では生物の細胞の中にある小器官として知られるミトコンドリアは、実は外から取り込まれた生物であった様です。
生物はミトコンドリアを取り込むことにより日光に依存しない強力なエネルギーを得ることに成功しました(有酸素機構の誕生)。これにより呼吸の重要性が増しました。

ミトコンドリア

あの頃の海ではない

冒頭で「内に海を持つ」と言いましたが、実際に海の水を飲むとしょっぱいです。
これは生物が陸上に上がってから相当の年月が経ち、海の水が蒸発し海の塩分濃度が濃くなってしまったからです。
人間の細胞外液のは0.9%の食塩水に相当し、1ℓの水に対して9gの食塩が入っていることになります。
これに対して海水は3.5%の食塩水に相当し、1ℓの水に対して35gの食塩が入っていることになります。
昔から随分と変わってしまいましたね。

雑多な内容となってしまいましたが今回はこの辺で終わりとさせていただこうかと思います。

今後もいくつかシリーズを出していこうかと思っておりますが、あくまで気ままにやらせていただこうかと思っておりますので未定です。
応援してくだされば幸いです。





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