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コラム 14 考えるコトをやめてしまったら

高さ50mの橋の中ほどバンジージャンプのジャンプ台。すぅっと消えてしまいそうな意識をつなぎとめながら、はるか下に見える湖面を眺めていた。

なぜこんな状況になっているのかわからないが、私は飛び込まなければいけないらしい。

ここへ連れてこられる直前の準備小屋で言われた言葉。そこから始まった不安が恐怖へと変わってきている。

「さぁ、どれを使うのか決めてください。どれでもご自由にどうぞ」

部屋一面の棚や机には多くの道具が並んでいる。

「え・・・?」


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今回は「怒られ続けると考えることをやめてしまう」というお話です。

出だしがおかしな場面からの展開となっていますが、なんとなく繋がってくれることを期待して書きはじめています。


若者が、進路や就職などを決める場面に出会ったとき、周りの大人たちがよく言う言葉があります。

「本人のやりたいようにさせたい」

この言葉を受けた若者たちは、大抵その答えに困ってしまいます。

「やりたいことがわからない。どうすればよいかわからない」

大人の言い分としては「もう大きくなったんだから自分のことは自分で決めなさい」ということでしょう。返事に困った様子を見ると「大体お前は自分のことも解らないのか!」などと責めはじめることもあります。


ここでの問題は「わからないということ」ではなくて「なぜわからないのか」です。

自分のことが分からないのは不思議。という言い分は確かにその通りなのですが、自分がこれからどうしたいのか、何をしたらよいのかが分からない人はたくさんいます。若者の多くがそこに含まれるかもしれません。

自分のことなのにわからないのはなぜなのでしょうか?答えは簡単で「これまで考えていなかったから」です。
自分のことなのに考えていないんです。これまでの生活で、自分の考えを発信して行動する場面が少なかったために、自分で考えることをしなくなったのです。

自分で考えていないにしても、今日まで毎日生活してきているのは間違いありません。
ということは、これまでの自分の行動は誰かに言われたとおりに過ごしてきたということなのでしょうか。しかし誰も好きで他人の言うことを聞くはずはありません。自分の考えではなく他人の言うことを聞くからには、何か理由があるはずです。

その答えはこれまでの失敗体験だと思います。正しく言うとそれは失敗ではなく否定された体験と言った方が良いかもしれません。

これまでの生活の中で、自分の考えを伝えたり行動した際、周りから指摘されたり非難された経験がそうさせてしまっています。
「自分の想いを言ったところで否定される。どうせ怒られる」このように考えてしまうことで「それなら何も考えずに言うことを聞いていればいい」としてしまいます。

自分で考えない方が楽なのは間違いありません。相手の言っていることをそのままやりさえすればいいのです。
ただ、他人が言っていることがいつも自分の思いと同じなわけではありません。楽に過ごすためには多少の我慢と反発が伴ってきます。
しかしそこで手に入るものは確実にあります。自由な時間です。

しかし、考える必要がなくなったことで余った時間を持て余すことはないようです。その時間の使い道は手元にスマホがあればいくらでも埋めることが出来てしまいます。頭の中に知識を入れることもなく発信することもない無駄な時間を消費する手段は身近にいくらでも転がっています。

このように、自分で考えずに過ごす環境が整っており、居場所を確保してしまっていますが、ここには意識的な注意が必要です。


そろそろバンジージャンプの場面に戻ってみましょう。
あなたはこれまでバンジージャンプについて調べたり考えたり勉強したりしたことはありますか?どんな道具を使うのか、そしてその使い方は?
おそらく無いですよね。

突然知らないことをやれと言われて、それが避けられないことであったなら困惑してしまうでしょう。そうなるとどのような行動に出るのでしょうか。

おそらくバンジージャンプのインストラクターさんに、どうすればいいのか教えてもらおうとするでしょう。知らないことなのだから教えてもらえて当然と考えるでしょう。そもそもこんな状況に追い込まれたことに不満をぶつけるかもしれません。

そこで、インストラクターさんは「大体お前はそんなことも解らないのか!」などと責めてきたらどうでしょう?
この言葉聞き覚えがあるでしょうか?先ほどの将来のことがわからないという若者に向けた言葉と同じです。

自分で考えることをやめてしまうような環境に育ってきた若者と、バンジージャンプのことを調べることのなかった自分は、同じなんです。

バンジージャンプのことを事前に調べておくことが大切なことだと言うつもりはありません。

若者には、ジャンプ台で困ることのないように、考えることをやめさせないような、環境づくりが必要だということです。

怒られたり否定され続けると考えない人になります。

将来のことがわからないという若者が、考えない人になったのは環境のせいです。その環境を作れるのは周りの大人です。


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