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【特別寄稿】藤岡康太さんとダービー馬が教えてくれたこと

 桜色のレギンスとももクロの調教服、
そして屈託のない笑顔。
有馬記念の抽選会に勝負服で参加するなど
サービス精神にもあふれていました。
初めてその名前を強く意識したのは
シルクフォーチュンでしょうか。
今思えば康太さん得意の追い込みは
そこが始まりだったのかも知れません。
ジョーカプチーノ、ナミュールとの思い出は
皆さんもあるでしょうから
ここでは、2021年10月10日、
マカヒキと勝った京都大賞典について
記そうと思います。
2分24秒5の矜持

〈マカヒキについて〉
 まず、マカヒキについて。
賛成反対はさておき書きます。
「ダービー勝って、フランスでニエル賞勝って、そこで引退しとけばレジェンドだよな」
口の悪い競馬ファンは言います。
確かにそこから17連敗…
一種の「ネタ馬」みたいな扱いに
なってしまいました。
そして8歳の秋、京都大賞典に出走します。
1番人気はアリストテレス。
競馬ファンの中には
「キセキに寄り過ぎている実況」で
記憶の方もいると思います。
マカヒキは14頭立ての9番人気に
甘んじていました。
入場制限があったコロナ禍の中、
ゲートが開きました。

〈我慢・闘志・我慢〉
 康太さんは馬群の中にマカヒキを導きます。
前後左右をライバル達に囲まれながら
道中は進みます。まるで闘志を
掻き立てるようでした。
阪神外回りの2400メートル、
長い長い向こう流しも位置は変わらず、
じっと、じっとしていました。
負け続けた17のレースの中、
ダービー馬としてはあり得ない評価を
受けたマカヒキをひたすら我慢させます。
友道厩舎なので、調教にも跨り
マカヒキとの信頼関係が
なせる技でしょう。競馬に乗って2戦目でも
長年寄り添ってきた友のようです。
今思えば、長くG1を勝てなくても腐らず、
ひたすらに笑顔で競馬と向き合ったからこそ
そのように騎乗できたのかもしれません。
 残り600のハロン棒を過ぎても
じっとしていました。初めて手綱が動いたのは
残り500、ムチをくれたのは
残り400でした。
4コーナーを回った時もまだ7・8番手。
でも、康太さんは決して諦めません。
アリストテレスがキセキの外に出し、
空いたスペースにマカヒキを突っ込ませます。
「必要なのは闘争心」
康太さんのメッセージでしょう。
直線の坂、阪神競馬場のそれは
登り切ってからゴールまで
90メートルくらいしかありません。
舵をを外に切ったのはちょうどその辺りです。
辛くきつい坂を登り切ってもまだ、
その先があるのだと言わんばかりに
マカヒキを激励します。
首先が出たのはゴールの僅か
1メートル前でしょうか…
坂を登ってから1馬身を逆転する。
その姿に僕たちは学ぶことは
多くあるでしょう。
そしてもし、長い低迷の時
戦いの場から去っていたら
こんなに心が震えることも無かったでしょう。

氣持ちでで負けない事。
諦めない事。
信じる事。

当たり前でシンプル…
でも、忘れがちなメッセージが
2分24秒5の中には詰まっています。

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