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アイトウ

 夜の暗さを考えているうちに朝が来た。
 昼の明るさを考えているうちに夕方が来た。

 初めての経験なんだが、初めてだと思い込んでいる。昨日、俺は会社をクビになって、でもまだクビに‘する’って段階なので、有給めちゃくちゃ使ってます。というか使い切ったところから。

 雪ではしゃぐ歳じゃないけど、楽しい。

 少しずつだけ、例えば電車の隣のカップルの噛み合ってない会話とか、あるいは俺とお前との会話とか、それがどんどん真っ黒になっていくようで、でも生きれるから辛いね。クビにする代わりに首を斬ってほしいよな。

 彼女泣いた。ワロタ。

 駅に着く。今日は雪が降る日だったので、朝は世界が白(銀ってほどじゃない)かったので、夜は雪が暗くなるんだなって思った。世界が黒くなるんじゃなくて太陽が沈んだだけだって論文を発表したら、異端としてちょっと処された。ちょっとだけ。

 おお、彼女ビンタした。おもろい

 雪なのですっ転んでるやつがいる。ちょっと笑っちゃうんだけど、俺も転びそうになったから。頭打って気失ってる。笑えねえよ。目を覚ませ、おい。

 強すぎないか。おいそれはやりすぎだって。いくら腹立ったからってそれはやりすぎ。気失ってるって。笑えねえよ。目を覚ませ、おい。

 で、俺は目を覚ました。目の前にいるのは彼氏の俺で、俺を心配する俺で、俺を笑う俺で、乗客の俺で、通りすがりの俺。で、鏡を見ると俺。

 それで、さようならって笑ったのが午前2時。夜。
 暗すぎた。寝るのにはちょっと暗すぎた。

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