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『Death of a Shadow』人の死をを撮影するカメラマンが主人公の短編ファンタジー

MUBIで配信される短編映画の大半は抽象的な作品が多いのですが、今回紹介するのは物語としてよく出来た作品でした。

タイトルは『Dood van een Schaduw』(英題:Death of a Shadow)、2012年公開のベルギー映画です。

主人公は第一次世界大戦で戦死した兵士・ネイサン。彼は死んでいるものの「コレクター」と呼ばれる男に捕らえられて「人が死ぬ瞬間に出る”影”を撮影して収集するように。そして1万人の”影”を集めたら再び生きるチャンスを与えよう」と約束されていた。

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人の死の瞬間を集める「コレクター」は薄気味悪い存在として描かれる。対照的にネイサンは良心の呵責を感じながらも、淡々と人が死ぬ瞬間を撮影していく。

ネイサンの身分や役割が説明された後、そもそも彼がなぜ死ぬことになったのか描かれる。彼は敵兵に追いかけられ、ある屋敷の敷地内に逃げ込む。そこで偶然鉢合わせた女性・サラが屋敷に入るよう手引する。だが無情にも敵兵が追いつき彼は射殺されてしまう。ネイサンの表情からサラに一目惚れしたことがわかる。

サラの存在がネイサンにとって「1万人の死の影を集める」という薄気味悪い仕事を続ける動機づけとなっていく。

ある日、指定された老人の死の瞬間を撮影しようと出かけたネイサンは見覚えのある場所にやってくる。そこはまさにネイサンとサラが出会い、命を落とした場所だった。老人にカメラを向けると、横からサラが出てくる。思わず彼女の方に目を向けると、ちょうど戦場に向かう恋人と一緒のところを目撃する。

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嫉妬に駆られたネイサンはその恋人の名前を調べ上げる。そして1万人目の”影”を撮影するために、サラの恋人が銃殺された場所へと向かう。

無事に1万人の”影”を集めたネイサンは再び命を与えられ、自分の好きな時代に行くことが許される。ただし1時間を過ぎると引き返すことはできない。

生き返ったネイサンはサラの恋人が殺された直後の時間に行き、サラと新しい生活を始めようとする。しかしサラはネイサンのことを受け入れられない。

狼狽するサラの姿を見てしまったネイサンが下す決断とは。

この短編映画を観て思い出したのがクリストファー・ノーランの『TENET』でした。SFファンタジーを巧みに現実世界に持ち込むところや、ある主要な登場人物の自己犠牲など共通項を感じます。

死の影を撮影するカメラや死者を探し出すマシンのレトロ感も絶妙です。

2012年アカデミー賞短編実写映画賞受賞作としても知られる本作品。第一次世界大戦を舞台にしたファンタジーの物珍しさも含めておすすめです。


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