見出し画像

感染症と闘うプロフェッショナルたち

Netflix『パンデミック -知られざるインフルエンザの脅威-』(原題:Pandemic: How to Prevent an Outbreak)全6話

インフルエンザやエボラ出血熱の大流行を防ぐために日夜働くプロフェッショナルを追ったドキュメンタリー。

地方と都市の間での医療資源格差。いつ出現するか予測不能な未知のウイルス。極端に人口密度の高い地域での医療。命を落とす移民の子どもたち。専門家に対する不信。新しいワクチンの開発。そして反ワクチン派。

これを見ただけで全てが理解できるわけではないが、これまで知らなかったことが確実にあるはず。

さらにこの作品は世界中で働く専門家たちのプライベートな生活にも密着している。家族との暮らしはもちろんのこと、カメラは彼らの信仰にまで踏み込んでいる。

キリスト教、イスラム教、ヒンズー教。宗教は違えど科学を武器に闘う彼らが敬虔に祈りを捧げる姿には感銘を受ける。見えない敵と闘うからこそ、見えないものに頼るのかも知れない。

最終話のエンディングではグッドニュースとバッドニュースが伝えられる。

結局のところ感染症との闘いに終わりはない。最悪の状況を想定して最善を尽くすしかないのだ。

全てを犠牲にして感染症と闘う世界中のプロフェッショナルたちに感謝したい。

シリーズを通して登場するデニス・キャロル氏の発言は、今後感染症と付き合っていく上で非常に重要だと思った。

以下に彼の発言をまとめる。

デニス・キャロル 合衆国国際開発庁 新脅威対策課
The Director of the U.S. Agency for International Development’s (USAID) Emerging Threats Unit.

S1E1

米国 ペンシルバニア州 バトラー郡
「ここは忘れられた場所。しかし我々に警告する。棒は遺体がある可能性を示す。つまりここは集団墓地。100年前、致命的なインフルエンザウイルスに世界中の数億人が感染した。病院が溢れ霊安室が溢れ返った。世界中の町が早い解決策を求めた。米国、ケニア、インドやベトナム。これらの国のあらゆる町に存在するこの墓地は、インフルエンザパンデミックの惨事を物語る。歴史に葬られたわけではない。次のパンデミックはいつ起こるかわからない。」

カオロック県 ベトナム
「ウイルスの場所を突き止めないと。ウイルスの居場所は鳥。仕事で世界中に行く。私の責任はウイルスの脅威に対し、対策と検出。対応と制御すること。今世界で最も危険なインフルエンザウイルスは、中国の鳥インフルエンザ。感染者の60%が死亡する。H7N9ウイルスは死亡率が非常に高い。しかし人間へは感染しにくい。今のところ中国の外には広まっていないが、いつでも起こりうる。インフルエンザウイルスの種類は無数にあり、H5N1など様々なHとNの組み合わせがある。HやNはウイルスの物理的な特徴や、感染がどれだけ致命的か示す。パンデミックと季節性のインフルエンザは大きく違う。パンデミックのインフルエンザは動物から、前代未聞の新型ウイルス。動物から来る新型ウイルスに我々は免疫がない。自然の免疫力では感染と闘えず、致命的になる可能性がある。だから世界中の研究者が万能ワクチンを開発する。あらゆるインフルエンザウイルスに効くワクチン。」

S1E2
「エボラウイルスは人と人との接触によって広く感染する。アウトブレイクは特定の地域にとどまるが、インフルエンザウイルスや呼吸器疾患系ウイルスは人から人へ非常に早く感染し、すぐに世界中に広まる。例えば2014年から2016年、西アフリカで流行したエボラ。史上最悪のエボラ流行は西アフリカの3国にとどまった。他国へ行った旅行者が2人いたが広まらなかった。3〜5万人が感染した。H1N1、いわゆる豚インフルエンザは2009年の春に発生。12ヶ月で世界中に広まり20億人が感染した。5万対20億という数がインフルエンザへの対応の厳しさを物語る。容易に急速に広まるから。2009年のウイルスの死亡率が高くなかったのはただ幸運だっただけ。より驚異的なウイルスなら数億人が死んでいた。」

S1E3
ベトナム バックソン県
「人工の増加とともに動物性たんぱく質の需要が増え、今までにない量の家畜が育てられている。問題は狭い場所に大量の家畜が収容されること。ウイルスが早く変異し蔓延するリスクが高まる。パンデミックの発生源は予想できないが、特に注目すべき場所はある。中国はその1つ。この半世紀で脅威となったインフルエンザウイルスのほぼ全てが中国で発生した。ベトナムからは国境の隣。だからインフルエンザの季節には5つの国境付近の市場を定期的にモニタリングした。近年の歴史で学んできたこと。モニタリングを怠るとウイルス拡散に繋がる。2005年新型鳥インフルエンザH5N1が中国から東南アジアに広がった。ベトナム政府は厳重な対策でH5N1の流行を制御しようとした。ベトナムは何百万羽もの鶏を処分。ウイルスは東南アジア、欧州やエジプトまで劇的に広がった。2005年9月、世界保健機関は世界的な鳥インフルパンデミックで1.5億人死亡すると推定。ベトナム政府は国内すべての鶏にワクチン接種しアウトブレイクを阻止しようとした。4ヶ月でそれは成功。毎回流行のたびに学べる機会になる。常にモニタリングをする。いつ動物に何かが発生し人間にうつるかわからないから。」

S1E6
「いつの日か1918年のようなウイルスが発生し、世界中に広まるだろう。70億人以上の健康の問題だ。世界中の政治家や医療関係者はこの問題を深刻に考えるべき。対策を備えるべき。油断は禁物だ。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?