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【EURO2024レビュー】オランダvsルーマニア 後でつなげなければ前でつなごう【決勝トーナメント ROUND16】

こんにちわこんばんわ、ひだりです。

Windtosh’s Catina Project.さん#ユーロ2024アーカイブ化計画 に参加しています。

抽選の結果、ひだりはオランダ代表を担当しています。
今回は2024/7/3(水)日本時間 午前1:00キックオフ、オランダ代表vsルーマニア代表戦のレポートです。

どうぞよろしくお願いします。


試合前のトピックス

決勝トーナメント ラウンド16の相手はルーマニア代表。

前節オーストリア戦を落としたオランダですが、敗戦から1週間の合間を持つこともできました。他チーム結果の影響も受け、結果として3位抜けが地獄の左山を避け、右山の比較的与し易いところに入ることができたあたり、オランダまだ持っています。

決勝トーナメントここから一発勝負ということで、切り仕切り直しで集中して臨む一戦です。

結果

🇳🇱オランダ 3-0 ルーマニア🇷🇴

フルマッチはABEMAでどうぞ!

基本配置

オランダ 433 保持325 非保持4231~433

オランダの配置は433。433-4231で自陣から組み立て、中盤~相手陣保持では右SBダンフリーが上がって325。

ルーマニア 4141

ルーマニアの配置は4141。攻撃・守備でボールサイドに人数かけてプレスを効かせ、オランダが前進しづらい状態で戦況を維持する狙い。アンカーとフォワードの上下動ハードワークが鍵となるサッカー。

前半

ルーマニアの連動プレスではじまる序盤

オランダボールではじまった試合序盤、ルーマニアはアグレッシブな守備から試合のペースを掴む。

オランダの最終ラインビルドアップに対し、ルーマニアはボールの行き先に合わせた連動プレスを敢行。サイドへ後方へと誘導しGKまで追う猛烈なハイプレスを見せる。
スピーディーに激しく人数もかけたプレスでオランダ守備陣を押し込む中、弾き返されたクリアボールは2列目で回収し、ラフでもいいので前に蹴る、ヘディングで前に運ぶ。プレッシングかけた体制そのまま人数の残っているオランダ陣内で再攻撃を繰り返した。

ファウルやゴールキックでオランダのターンに切り替わると、44ブロックを敷いてハッキリ引いた防御体制を取る。アンカー、CFが方向の制限や空いたスペースを埋めるサポートに入り、ボールを奪うと手数をなるべくかけない速い攻撃で前方にボールを送りシュートで完結を図る。
序盤の時間帯のルーマニアは、なるべくボールをオランダ陣内から出さずにゲームを進める狙いを見せた。

後ろでつなげないなら前でつなぐオランダ

前半10分すぎ、デパイが中盤に降りてのポストプレイを活かした前進に成功したことをきっかけに、オランダの中盤高めでのポゼッションが有効に機能しはじめる。

高めを取る最終ライン。後方でのビルドもそこそこに、まずボランチ位置のスハウテン・ラインデルスに預けると、そこから325の前5枚へとボールを差し込んでいく。
特にシャビシモンズの浮いた位置取りが秀逸だった。ゾーン2・ゾーン3間でうまくボールを受け、スペースない中でもルーマニア守備の封鎖・プレスの具合を見て、サイドや守備ラインの裏へ、効果の高い方へとボールを散らしていた。

後ろでのボール回しを最低限に、中盤から前へ前へと侵入を図るオランダの選手に対して、ルーマニアは前向きな守備をかけづらい。全体に後退してのブロック守備を強いられる。

オランダのアタック経路は大きく2つ。

  • 左サイド攻略:シャビシモンズを中継役に前のデパイ、左ウィングのガクポが絡む

  • 右サイド攻略:攻撃参加する右SBダンフリーズを使った

左右の攻撃を意識させながら、中央~ポケットに入り込むデパイにボールをつけてポストプレイからの打開も図る。

ルーマニアは、ゴールキックやクロスボールのキャッチなどプレーの切れ目までオランダの攻撃を耐えて待つ。
機を見てロングボールを前線に当てて陣地回復~速い攻撃を図るが、そこはハイラインを敷くオランダの最終ラインに即時対応される。

オランダの攻撃~クリア~再回収の繰り返しでボールを握り倒す中、19分、スハウテン中央付近からルーマニア守備3枚を切り裂くスルーパスからシャビ~ガクポと展開しルーマニア守備との1対1をカットインで切り込んで右足一閃、ニア下ぶち抜く強烈なゴールでオランダが先制する。

オランダのサイドアタックとセットプレーの両面侵攻

先制後もオランダのムード。

ルーマニアの敵陣で前からボール保持者に寄せてくる守備を応用し、オランダは4バックでいなして相手プレスを引き出し、そのプレスの裏や脇を縦楔で突いていく。
ボールがルーマニアのファーストプレス隊を越えると、ダンフリーはすかさず前線へ上がり、クロスやカットインでペナルティエリア内をえぐる動きを繰り返した。

また、ルーマニアの出方に対してサイドアタックからクリアやファウルに合ったらセットプレーで良いという割り切りの良さを感じるこの日のオランダ。前半40分時点でコーナーキックはルーマニア0オランダ10を数えた。
コーナーキックやフリーキックでのアタックも挟んで圧をかけ、ルーマニアは多くの時間で11人が守備に奔走させられた。

前半総括

オランダはゲーム序盤ルーマニアの積極的に寄せてくる守備に苦しみ前進しづらかったが、慣れてきた後は、最終ライン4枚+ボランチで相手守備を複数引き寄せた上で回避、1枚飛ばしの縦楔で前線5枚のどこかにボール当てる、大外取るSBからクロスと安定したゲーム運びを見せた。
グループステージ最後のオーストリア戦では相手の密集プレッシングに規制をかけられ苦労したオランダだったが、その反省もあったか、自陣4バック・敵陣3バックへの移行が非常にスムーズに機能していた。

ルーマニア撤退守備は後ろ5枚でゴール前を守る部分が徹底されていることから、逆にコーナーキックでもいいよとサイドの突破力にかける単騎大外アタックがほどほどに効いた。先制点もルーマニア5バックの外から仕掛けカットインで横ズレ作った瞬間の一撃だった。

前半ロスタイム付近、少し守備がボケた時間帯、ルーマニア陣内でのセカンドボール回収で自由を許すと前線2枚にあてるロングボールからオランダ3バックの脇を取る攻撃を数回受けていたので、後半ラクに蹴らせない対応を再徹底したい。

ルーマニアはCK数が示す通りハイプレス&ローブロックで押し込まれるとジリ貧の気配。できればオランダが縦に付けた後サイド展開される前に取りきりたい。中盤でのプレス圧力をどう担保するか、その時ハイプレスでのビルドアップ妨害をどこまでかけオランダ自陣ボール保持をどこまで許すか。さじ加減。

後半

ルーマニアボールのキックオフで後半開始。
後半も序盤はオランダが耐える展開。
ルーマニアはボールを保持したいオランダに対して前の選手が前進ルートを規制、1列奥の選手がプレスをかけにいく動きで仕掛ける守備の枚数を増やしてオランダを自陣内へと押し込んでいく。

詰まった時のスローイン活用

48分、右サイド側のタッチラインを割ってのアケのスローインに触れておきたい。(町田サポとしては大事。)

投入に少し時間をかけて、オランダ選手がスロワー側に寄っていく。当然ルーマニア側選手もあわせてカバーについて来る。スロワー前方を密集気味の状態にしてから、少し高め・長めのスローを前のハイタワー(ガクポ)にあてる。

ガクポはヘディングで密集のない中央へボールを逃がし、そのまま逆サイド攻撃に移ろうとしたところで、ルーマニアのファウルでプレイ中断となるのだけど、ほぼ中央からのフリーキックで再開となる。ルーマニアは自陣に引いての守備に切り替えざるを得ない。ここで後半序盤からオランダを自陣に押し込んでいたルーマニアのターンは終了となった。

この試合、前半10分の中盤高めポゼッションに移行した際も、実はプレイの初動はスローインだった。オランダは相手の前線守備に苦しんだ状況でスローインで陣地回復するのが地味に上手いというのはこれまでの試合でも時折感じていたこと。

リスク抑えチャンス量産も決めきれない展開

49分ラインデルス最終ラインビルドアップのサポートからルーマニアの前線プレス裏でボールを受けて中央ドリブル爆走、ゴール前まで到達しブロックこそされたがシュートで終えるナイスプレイ。

中盤から前のパス連携が攻略のカギとなっているこの試合、前半から総じてラインデルㇲのボール関与がところどころ効いていた。守備陣からボールを引き出す動き、ルーマニアの守備を釣る動き、前向きでボールつける素早い判断。浮いた位置でボールを収めて攻守をうまくつなぐ役割を果たしていた。

以後の時間も中盤でのパスでの崩し、機を見て左右サイドへの大きなクロスでの展開も交えながら、オランダのボール保持を中心に試合が進み、数多くの決定機を作るがなかなか得点に至らない。62分には左CKからの流れで、ファーに流れたキックの折り返しからのこぼれ球をガクポが押し込みネットを揺らすものの、 VARの結果オフサイドの判定。

チャンスを決めきれないまま1-0で推移する試合の流れの中、69分にはスハウテン、アケに代わりファン・デ・フェン、フェールマンを投入。スコアが動かない中でも、オランダは前半から続ける縦楔によるポケット襲撃とサイド攻撃でチャンスの山を作り、逆に、ルーマニアが早めに前線へ入れてくるボールをハイラインで回収し、ピンチの芽を摘みチャンスを与えない。

81分、オランダのコーナーキックの跳ね返しをルーマニアが収め、後半はじめてと言える被カウンターのピンチ。ボール競り合い時にルーマニア 、オランダ選手の顔前に足を高く上げてファウルでプレイ停止&イエローカード提示。通されると大ピンチだったためオランダは助かった形。

リードを広げた「ガクポの1ミリ」

ピンチの後にチャンスが来る。
ルーマニアのファウル直後の82分、スローインでの再開からペナ角付近でボールを収めたガクポ。ルーマニア守備者と競り合いながらタッチラインギリギリでボールを残してドリブルカットイン、ゴール右脇からアウトサイドで中央に落としてマーレンが詰めてゴール。2点差への突き放しに成功する。

ルーマニアはタッチライン際でのガクポの突破にゲームが切れるとセルフジャッジしたかボールを塞ぐムーブを止め、見送ってしまった。一瞬の集中の切れたところをガクポが突いた形だった。

試合後どっかが出すかなと思ってたらやっぱり出てた「ガクポの1ミリ」。ABEMA TIMESなのでやや手前味噌な感じはありますが(町田の報道でもよく感じるやつ)

最終盤

最終盤の守備スレスレムード漂いがちなオランダですが、この試合は無理をしないまでも選手が前に出てボール保持する試合運び。
ダンフリーも攻め上がっても無理はせず帰陣するをきちんと繰り返し、オランダがチーム全体として前に出る可能性を残しているため、ルーマニアも仕掛けたくても無理に前へは出れない。

84分ガクポOUTベグホルストIN、92分デパイOUTブリントINとFWのお役御免の交替策。ポストプレイに秀でるハイタワー・ベグホルストを入れることで前で時間を確保できる体制を整えつつ時計を進める。

93分、ルーマニアCK ハイボール、ファーで落とすサイドクロスを入れるもクリア。クリアボールをシャビが残し、マレンが単騎カウンター、中央持ち込んでDFかわしフィニッシュ、オランダだめ押しの3点目。
シャビが良く残して左に張ったマーレンにつないだ。落ち着いて決め切ったマーレンのドリブル~フィニッシュも素晴らしかった。

ゲーム終了、オランダ3-0ルーマニアでオランダ快勝。

ひりつく展開をしっかり受けて、相手のイヤがる部分を突き続けたオランダ。チャンスを作っても最後なかなか決まらず膠着した時間も長かったけれど、最後交代出場マーレンが仕事する2発。理想的なROUND16勝利だったのではないでしょうか。

まとめ

ボールの経路を作ったシャビシモンズとラインデルスの好パフォーマンス

シャビシモンズとラインデルスの高パフォーマンスが光った試合だった。スハウテンも良かったけど特にこの2人。
ルーマニアの4141に対して、主に1の高さ付近の浮いたポジショニングでルーマニア守備の裏のスペースを取ったり、逆に守備者をピン留めしたり、ボール保持非保持両面でゲームの流れに影響を及ぼし続けた。

フィニッシャーの能力がハッキリしてる分、サイドへ、トップへボールをボールを運ぶ中継地点をどう作るかに成否がかかり、それをフワッと鮮やかにやってのける柔軟な戦い方に伝統のサッカー強国の強さを見た気がする。
後半相手が落ちてきた時間帯になると徐々に一気の縦パスも織り交ぜたり、理にかなった試合運びだった。

後3バック4バックのスムーズな切り替え

また、ダンフリーの精力的な上下動とそれに合わせた最終ラインのポジション調整・クリアボールや被カウンター時の準備が適切だった。

攻撃時3バックと守備時4バックの切り替えが今大会このROUND16までで一番安定していた試合に見えた。
それぞれの形の長所を活かして短所を隠す、それを90+5分シームレスに切り替えて対応し続けた。
もちろん、もともとの戦力差もあるかもしれませんが、大会期間中のチームの成長・進化を感じた試合でした。


仕事私事等でバタついており執筆時間取れず遅くなりました。。睡眠不足にこの殺人的暑さも身体に頭にキますね…。
明日未明の準決勝までにトルコ戦振り返りは終わるのか。ざっくりやっとけるといいなーと思っていますがはてさて。。できる形でやります。

今朝のフランスvsスペイン戦も激戦でしたね。エグすぎるスペインの2ゴールと後半フランスのスピードを上げさせない試合運び、奥深いなと思いました。担当さんレビュー楽しみです。

ここまで来たら決勝行ってほしいなー。勝利を祈りつついったんここまで。GO!ORANGE GO🍊

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