Advent calendar(12/17)

12月17日

エントランスへと
階段を降りて行くアン社長を
テギョンは追いかけ

抗議する

「アン社長!イブはスケジュールを入れないでくれと
言っておいただろう」

「まぁまぁ落ち着け
これもファンサービスだ
急な話だが
悪くない
記念日こそファンを大切にだな」

「ファンサービスならしっかり予定に入ってるだろ!
クリスマス当日に」

社長の決まり文句を遮って
テギョンは抵抗する

「なんだ?テギョン
イブに一緒に過ごしたい相手でも
できたのか?」

「い、いやそうじゃない
そうじゃないが」

「ならいいじゃないか
ほんの数時間のラジオ出演
イブにファンへの愛を歌う
いい企画じゃないか
よろしく頼んだぞ」

大きく手を広げ
良く通る声で
演説ぶつと
テギョンの肩をポンと叩き
清々しい笑顔を見せ
社長は手を振りながら去って行った

ミニョがミナムになって以降
アン社長に対して秘密を持つ事が増えた

ミナムがミナムに戻った後
ミニョと自分が新しい関係になった事も
今はまだアン社長には報告をしていない

「いい大人が
交際を始めました
なんて報告が必要か?」

不敵に笑い飛ばす気持ちの裏側で
順風満帆に来なかった
二人の事を思うと
何だか
いつこの関係性が
崩れてしまうのかという
怖さがテギョンの中にはあった

人との関係など
いつか変わるかわからない
稀薄であるのが一番だと
長い事培ってきた
自分なりのこだわりは
人に裏切られる事への
恐れである事を
テギョンは知っている

「あなたを好きでいていいですか?」

「不愉快ではありませんか?」

「あなたを好きでいられるだけで
嬉しいんです」

涙を浮かべ
そう言っていたミニョが

自分を拒絶した
あの日の事は
忘れられない

あれ程自分を見つめ続けていたと言うのに
自分を見ているのが辛いと
真っ直ぐに向けられていた
瞳をそらした事は
今思い出しても
テギョンの心を簡単に動揺させる

どうすれば
人の心というものを
永遠に自分に惹きつけておくことが
できるのだろう

100万ものファンを持つ
世界的スターが
たった一人に
悶々としているなど
きっと誰も想像しないだろう


クリスマスイブまで
あと一週間

疾うに
クリスマス一色になっている
街の中を
テギョンの青い車は
走り去って行った




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