屋久島不思議体験記 ①
音声版(Podcast)はこちらから
世界遺産に登録されたり、映画「もののけ姫」のブームで脚光を浴びる以前に屋久島にこれまで三回旅行に行った。
何故行く気になったかというと、レイチェル カーソンの「沈黙の春」や、C.W.ニコルの「Tree」を読んで自然への意識が高まり、大きな木を見たくなったからである。
また当時イギリス児童文学をよく読んでいて、妖精譚に憧れを持っていたこともある。
というのは表向きの理由で、「呼ばれた」ような気がしたからである。
親友のサイキックの瑠璃に、屋久島への旅行プランを持ちかけると、
「私も気になっていた、呼ばれているような気がするから是非行こう。」
と意気投合したので、もう一人共通の友人ちょしちゃんと早速旅行社でホテルやレンタカーを予約した。
鹿児島まで飛行機に乗り、鹿児島から屋久島へ向かう飛行機で初めて小さい飛行機に乗った。
狭い室内に慄きながら飛行機が離陸してそのプロペラの爆音に更にビビる。
しかも折り悪く台風が接近していて、屋久島への便が飛ぶかどうかまで怪しかった中でのフライトなので揺れる揺れる。
間もなく酔ってきた。乗り物に弱い私。
吐き気をこらえながらシートベルトと紙袋(エチケット袋)を握りしめて座っていたところアナウンスが流れる。
「強風のため着陸できない可能性があり、着陸できない場合は鹿児島空港へ引き返します。」
というもの。
一気にみんなに緊張が走る。
いやこの風むしろ、飛行機落ちない?無事で済むの?
というくらい揺れている。
横で瑠璃らはパニック気味で怯えている。
有給休暇を取得して、関西から来たのにキャンセルになったらたまらない。
飛行機が引き返したら、鹿児島で台風の中、桜島でも観るんかいなー、と代替プランもろくに浮かばない状態で、頼むから屋久島の地を踏ませてくれと思わず神頼み。
「屋久島の神様ー!私たちをそちらに行かせてください!」と祈る。
するとふっと夢の世界に意識が飛んだ。
夢の中で白っぽく霞がかかった岩肌の空間に、仙人のような服を着て頭を上に引っ詰めたおじいさんがにこにことこちらへ来て、透明な器を渡された。
おじいさんだけでなく、似たような長衣を着たやはり髪を上に引っ詰めた女性も数名いてにこにこしている。
みんな鮮やかな青や赤紫の、古代の衣装を纏っている。
覗き込むと透明な液体に紫ピンクの小花が浮いたスープで、飲むように勧められた。
おじいさんはにこにこ笑っている。
器に口をつけて飲み込むと素朴な花の芳香を感じて瞬間目が覚める。
横に座っている瑠璃が呆れた顔をして、「よくこんなに揺れてるのにうとうとできるよね?」と私の顔を覗き込んだ。
「いや、私今不思議な夢見てさー。」と、夢の内容を話すと瑠璃は目をキラキラ輝かせて
「よっしゃ!屋久島の神様から招待された!
そのおじいさん、屋久島の神様だよ!
飛行機は絶対着くね!」
と大喜びしている。
瑠璃は社会人になるまで霊能事務所にスカウトされ、除霊や地鎮祭などの仕事をしていたので、そう分析されると、そうか、神様だったんだ、と素直に思える私だった。
スープに浮かんでいた花は、後で調べたところ、屋久島固有種の「屋久島ツツジ」の花のようだった。
飛行機は着陸態勢に入っては旋回し、幾度か着陸を試みた。
私たちはもう落ち着いて着陸の成功を祈った。
3回目だったと思う。
とうとう着陸に成功して屋久島の地を踏んだ。
ほっとして乗り物酔いも吹っ飛んだ。
私たちは屋久島でも大きめの老舗ホテルへレンタカーで向かった。
ブームが起こる前の時期だったため、屋久島は静かで宿泊客も少なかった。
そんな静かなリゾートホテルでのこと、部屋に案内され一歩入った途端。
•••ここ、なんだかヤバイ
と感じて窓のカーテンを開けた。
(今思えば昼間に通された宿の部屋にカーテンがかかっているっておかしくないか?と思う)
そこは川べりだったが、川からなんとも言えない変なエネルギーの流れを感じて、うっっとなった。
カーテンを開けて絶句していた私に瑠璃が、
「ここ•••夜要注意だから結界張っとくね。」
と囁き、準備しだした。
そして就寝前、部屋に到着した時の違和感は忘れておしゃべりを楽しんでいたところへ
バンッ!!
と窓ガラスを叩く激しい音がした。
外は川、フロアは二階、誰かが通りすがりに物理的に窓を叩くのは無理とわかっている。バルコニーも無い。
「来た!」
瑠璃は印を結んで臨戦体制に入った。
カーテンは閉めていた。開ける勇気もなかった。
バンッ!•••バンッ!
窓を叩く音は断続的に続いている。
波長が合ったから心霊現象が起こっているけど、他の人は認識できるのかな?
ちょしちゃんがビビってパニックになっていて、瑠璃が説明している。
窓の外大勢の方がいらっしゃる気配で、一向に入ってくる様子はなく、窓ガラスで仕切られているからって律儀だなぁ。なんて変に感心していた。
瑠璃は天界のじーちゃんの力を借りて結界を強化する!と頑張っていた。
瑠璃のじーちゃんは、他界した親族の中で一番霊格が高く、ピンチの時はよく力を借りるそうな。
すると私の方も背中に空から暖かく力が満ち溢れる清らかな光のようなものを感じてきた。
私は感謝しながら、これで彼らの不法侵入は避けられるな、とその注がれる光に意識を集中した。
当時はまだ携帯電話も無く、ポケットベルの時代。何かを調べるなら図書館、辞書、時刻表といった紙媒体だった。
当初なんとなく脳裏に平家の落武者と浮かんだのだが、後で調べたら屋久島の平家の落人伝承が実際あるので「おおー!」と思った。
しばらく窓の外で頑張った彼らは
「また来る」(瑠璃通訳)
と言い残して去っていった。
時間を見ると丑満時だった。
翌日早朝出発して、屋久杉を見るべく登山をした。
縄文杉は、往復8時間の登山をしないと見られない。
登山道は整備されていて女性でも子供でも見に行くこと自体は不可能ではない。
ウィルソン株という巨大な切り株や巨大な屋久杉を眺め、途中、少し若い屋久杉のところで休憩がてら、瑠璃が
「屋久杉と会話してみよう!」と切り出した。
彼女は以前、植え込みのところに腰掛けるとき後ろを振り向いて「ごめん!」と言ったことがあって、何に謝ったのか訊くと、
「ツツジがイテッ!と言ったから。」と言う。
植物に痛覚があるの?と当時はびっくりして尋ねると「あるみたいだよ」と言う。
そんな彼女だから今回はどんな話が聞けるのだろうとワクワクして彼女の指示に従う。
若くて苔がもっさり生えている木に目が止まって木の幹に手を当てた。
すると、ちょしちゃんが、
「なんで人間は車に乗るの?と質問された気がする。」
と言い出した。
「えっ?ココ、山奥でここから車道なんて見えへんで??」
と私がツッコミ入れると、瑠璃は、
「うん、確かにそう言ってるね。
木はね、世界中に意識のネットワークがあってお互い会話ができるから、この若い木は、人間がわざわざ車に乗ってあちこちに行くことが理解できないんだって。」
と、解説してくれて、その若者の木に、人間がなぜ車に乗るのか教えてあげていた。
また、木はこうやって普段から人間に語りかけているらしい。
だからもっと意識を持ってあげて欲しいと瑠璃が教えてくれた。
当時の私は、手を当ててもよくわからん。という感じで2人がちょっぴり羨ましかった。
そうこうしながら、奥まったところにある縄文杉にたどり着いた。
想像以上に巨大な木だった。
教科書や本ではわからない大きさでひっそりと佇んでいる。
ここまでの道中、倒れて苔むして、森に命を捧げている屋久杉をたくさん見てたどり着いたので(倒木更新という)、ここまで巨大になったことを凄いと感じて畏怖の念を感じた。
倒木更新について
当時はまだ、縄文杉を触ることができた。
手を当ててじっと目を瞑っていた瑠璃が目を開いた。
「この木は、心を閉ざしてるよ。」と。
たくさんの仲間が人間によって切り倒されたのを見てきたが、自分は切られずに生き残ったいて、いたたまれなくなったらしい。
あの巨大なウィルソン株だって、豊臣秀吉が知恵を絞って、この土地の人たちの信仰を利用して策略をもってして、土地の人々に信仰されていた大木を切らせるきっかけを作ったのだ。
ウィルソン株について
つづく
音声版では、「屋久島不思議体験記 その3」からが、未公開エピソードです。
こちらも良かったらご視聴ください。
Podcast版 屋久島不思議体験記 その3
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