バンザイフリーライド

2023/7/13東京新聞

5000人の非正規労働者の賃下げをたったひとりだけが拒否し労使交渉を始めたら共に立ってくれたのは1人だけでみんなから距離を取られそして2人だけで5000人全員の6%賃上げを獲得したのに感謝の言葉を伝えたのは5000人のうちたった1人だったと。

嗚呼ものすごく日本。

記事は以下

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全国展開する靴小売店「ABC―MART」の千葉県内の店舗で働くパートの女性(47)が、労働組合に入り団体交渉したところ、パートら約5000人の基本時給が平均6%上がった。物価高なのに賃下げを求められ、一人で声を上げたのがきっかけだ。労組の活動に賛同する仲間が少ない現実にも直面しつつ、闘うだけでなく、働く条件を良くするために会社側と対話を重ねている。

◆怒り「非正規をばかにした対応」
 店長から昨年末、評価項目の変更に伴い、時給が20円下がり1010円になると言われた。今回の評価の変更も説明があいまいだった上、食料品が値上がりする中での賃下げに「非正規をばかにした対応」と怒った。女性は、年金が少なく介護が必要な両親の生活費に自分の稼ぎの全額を充てており、受け入れ難かった。

本社の社員に「おかしい」と訴え、労働基準監督署に相談しても、状況は変わらない。社内に労組はなく、一人から入れる社外労組の存在を労基署に教わり、賃下げ撤回を求める団交ができると知る。労組の「総合サポートユニオン」(東京)にたどり着いた。
 ユニオンは今春から、企業の枠を超えた個人加盟の労組が集まり非正規の一律10%賃上げを求める非正規春闘を始めようとしており、参加を決めた。「賃上げまでできるんだ」。組合活動は驚きの連続だった。
 店舗前などでの街宣がテレビなどに報じられ、ツイッターでも発信を強める中、会社からユニオンに「女性の賃下げを撤回する」と連絡が入った。だが賃下げに落ち込んだ同僚の表情が忘れられず「他の人も撤回しないとおかしい」と納得しなかった。一人で15分早く仕事を終えるストライキもした。
◆労組の現実も「会社良くしたい」
 別の店のパートが一人ユニオンに加わり、2人で団交に臨んだ。「時給は会社の鏡だから上げないと人は育たない」と訴え、団交を3回へた4月に賃上げで妥結。女性の時給は5月分から60円上がって1090円になった。
 ただ同僚から感謝を言われたのは一人。「仕事量が増える」など否定的な意見さえ耳にした。労組に加入した後から同僚らに「距離を取られている」と感じ、声を上げる仲間も最後まで一人だけだった。非正規春闘では賃上げされない事例が多いことも知った。

労組の現実を思い知りつつも、団交を重ねて評価項目が開示され、倉庫に電気がつくなど店舗の問題が改善された。会社と「闘う」心境から変わり、今はパートらの声を継続して経営に伝える方法を模索する。「会社を良くするための話し合いを続けたい」と願う。

 運営会社「エービーシー・マート」(東京)は本紙の取材に「団体交渉を通じ、経営状況や実質賃金の減少などを総合的に勘案して平均6%の引き上げで合意した」とコメントした。
非正規の賃上げ 労働組合がある企業では労組が賃上げを求めて団体交渉するのが一般的だが、正社員が中心で、パートら非正規は労組が職場になかったり加入を認められなかったりする。このため非正規は賃金を団交で上げる感覚が薄く、各企業の労使が横並びで一斉に交渉をする春闘への関心も一般に低い。

◆SNSの発信、影響力大きく
 靴小売店「ABC—MART」のパート女性(47)が1人で声を上げたのをきっかけにした約5000人の賃上げは、団体交渉で非正規労働者の賃金を上げられる可能性を示した。個人加盟の労働組合が多数集まって賃上げ圧力を強める「非正規春闘」が寄与した形だが、広がりや継続性といった課題も大きい。
 賃金に詳しい浜銀総研の遠藤裕基氏は、約5000人の賃上げが実現したことを「企業別の労組の枠を超えて非正規が連帯したのがポイントで、交渉力が強くなった。交流サイト(SNS)で発信した点も、賃上げへのネガティブなイメージを避けたい企業側との交渉に寄与したと考えられる」と分析する。

 企業の枠を超えて賃上げへの圧力を強めるのが春闘の本来の役割で、非正規にも一定の効果があったといえる。しかし成功例ばかりではなく、非正規春闘に参加した非正規が働く36社のうち、3分の2は賃上げがされていない。

課題は賃上げの広がりと継続だ。働く人のうちパートら非正規が労組に加入する割合は、増えているが8.5%にとどまり、労使交渉の基盤が弱い。春闘のイメージを聞く連合総研の昨年調査(複数回答)では、「わからない」が61.7%と圧倒的だ。非正規は春闘の団交より最低賃金の引き上げに注目する人が多い。
 遠藤氏は「より広く非正規を組織化したり、労組の横のつながりを強化したりして交渉力を高めることが大切」と話している。

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お上のお達しには決して逆らわない。
お上が定めた決まり(それがどんなに不条理であったとしても)を守るということが、この国の民の言う「和の精神」の正体ではなかろうか。
和の精神なんて片腹痛い。ただの奴隷根性である。

第二次世界大戦中、マルクス、エンゲルスが「全世界の労働者よ、団結せよ」というスローガンを掲げた。私は誰とも団結したくないけれど、団結するというより、共に問題に向き合って行きたいとは思う。

この国は、選挙権にしろ、労働権始め様々な権利に関してあまりにも無防備である。そもそも民主主義自体、ある日突然降って来たのだから堪らない。
西欧式の基本的人権だって、結局、多数の日本人には浸透しているとは言い難い。

埼玉の投票率が20%とか聞いたし。
基本的人権なんて、どこ吹く風なのだろう。

20%の民主主義とは。

フリーライドの精神が80%。
女性の地位向上も、フリーライド。
労連も、フリーライド。
メーデーも、フリーライド。

民主主義とフリーライドは、対極にあると言ってもよいくらい、相性の悪い概念だ。

別に労働者でなくても、フリーライドしない。

こんな時、イギリスとかフランスとかイタリアの日々を、懐かしく思ったりする。あの、渦巻くような人権への飽くなき追求心、容易に線引きできない、上下でも左右でもない、あの自分ごと感。

この国に蔓延るこの不可思議な現象に、いつも違和感を禁じ得ない。
しかし、そろそろ、フリーライドの人たちに殺される。

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