水俣病

環境省が長年「聞く姿勢だけを見せ続けて来た」ことを目の当たりにしたこの懇談の場であり、大臣の傲慢や環境省の怠慢その他他者の尊厳、そして人権の軽視など短い中にも社会問題が見事に凝縮されたニュースとなっている。

環境省はこの歴史について誰も効果的な弁明はできまい。世論が後押ししないことによる罪、というのは問われるべきだが、それは政治家をフォローすることはない。政治家による意図的な放置はどこをどう切り取っても責任逃れはできない。

全て政治のせいにはできないが、すまん、こと日本に於いては「政治があらかた悪い」とはっきり言いきろう。
なぜなら民主主義、民が主体となる政体ではないから。

また、政治が悪いのはもちろんのこと。

この懇談の場に、RKK熊本放送とNHKの取材が入っていたらしく、まず一報を出したのは熊本放送だと言う。NHKはその日のニュースでは報じず、今(2024/5/9)になってガンガン発信しているのを見るにつけ、

ジャーナリズムの核であるスクープ、いや第一報を出す力がもはや公共放送から失われていることに、私は非常な恐ろしさを感じる。
そして、NHK政治部には、アジェンダの提起という力も見られないことになる。
メディアとして、他社が提起したアジェンダをただ流すだけである。

別に右か左か上か下か前か後か大きいか小さいかを定義してほしい訳ではない。

アジェンダを提供し、世に問う姿勢、世論を沸き起こさせるようなジャーナリズムを発揮してほしい。

昨今のNHK政治部は両論併記すらしない。するフリさえもしない。

ただの掲示板である。
日本でも有数の質量共に最大規模の取材力を保持しているにも関わらず、彼らはその取材力をジャーナリズムに使わない。

私たちの国は、ジャーナリズム不在という大きな問題を抱えている。そしてこの損失は徐々に牙を向ける。もちろん、市民の方に。

今月1日にあった水俣病患者らの団体との懇談の場で、環境省がマイクの音を切るなどして団体側の発言を遮った問題をめぐり、環境省は7日、近く団体側に直接謝罪する意向を明らかにした。林芳正官房長官も対応は「適切でなかった」との認識を示した。

 懇談相手だった伊藤信太郎環境相による謝罪は現時点で予定されていないという。

 現地で司会を務めた、環境省の木内哲平・特殊疾病対策室長によると、懇談の場では各団体が話す時間を3分と設定。伊藤環境相の帰りの新幹線に間に合わせるため、時間を超えるとマイクの音を切る運用を決めていた。このため、時間経過後に環境省の職員が2団体に対し計2回、マイクの音を切ったという。

 省内で聞き取った限り、こうした運用方針は昨年もあったが、実際には制限時間を超えてもマイクの音を切ることはなかった。今回は事前に団体側に説明したり、会場でアナウンスしたりして理解を求めるつもりだったが、「急いでいて気が動転していた」ため、しなかったという。

 問題について、伊藤環境相には7日に報告し、マイクの音を切られた2団体に事務方が謝罪するよう指示を受けたという。ただ、具体的な時期や、再び懇談の場を設けるかどうかは決まっていないという。

 担当者はマイクの音を切ったことなどによって「不信感を与えたことは不適切だった」と説明。3分という時間設定も適切かどうか検討するとした。

 林官房長官は7日の記者会見で、懇談の場の重要性を指摘した上で、「環境省の対応により関係者の方々を不快な気持ちにさせてしまったことは、適切な対応であったとは言えないと考えている」と述べた。

 患者団体などでつくる水俣病被害者・支援者連絡会は7日、伊藤信太郎環境相による謝罪と、改めて意見交換の場を設けることを求める要望書をまとめ、環境省に送付したことを明らかにした。8日に熊本県水俣市で記者会見する。

 懇談は、水俣病公式確認から68年となった1日の慰霊式典後に、環境相が当事者の声を聞く機会として設けた。患者側の持ち時間は3分とされ、時間を超えると司会役の環境省職員が内容をまとめるよう促したり、マイクの音声を切ったりした。

 要望書は、「水俣病被害者たちの願いや思いを踏みにじり、苦しみ続ける被害者たちの言論を封殺する許されざる暴挙」「満身の怒りをこめて抗議する」と指摘。高齢化に伴う医療や介護などの課題について、国の誠実な対応と施策の検討、具体化を求めた。(市野塊、渡辺淳基)

朝日新聞digital2024/5/7

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